社説:教団解散請求へ 根深い問題、なお道半ば

 高額献金被害の訴えが相次いだ世界平和統一家庭連合(旧統一教会)に対し、文化庁が宗教法人法に基づく解散命令を請求することを決めた。

 大きな節目といえるが、政権の対応は道半ばだ。被害者の救済と再発防止、教団と自民党の関係解明を引き続き求めたい。

 過去に法令違反によって解散命令が出たのは、刑事事件になったオウム真理教など2件である。今回は、政府が民法上の不法行為も含まれると解釈を広げた。損害賠償判決などから約1550人の事例を集め、宗教団体の目的を逸脱した法令違反の行為が認められるとした。

 この判断を宗教法人審議会は全会一致で了承した。政府は13日にも東京地裁へ申し立てる。司法の判断が焦点となる。

 問題が顕在化したきっかけは、昨年7月の安倍晋三元首相銃撃事件だ。教団への献金や霊感商法によって生活が困窮し、家庭が崩壊する事例が当事者の訴えや弁護士の調査で次々と判明した。

 文化庁は昨年11月から7回、質問権を初めて行使し、教団の組織運営や財産・収支、教団本部のある韓国への送金などについて資料の提出を求めた。

 オウム真理教への解散命令が出たのは請求から4カ月後で、最高裁決定までさらに3カ月要した。今回も長期化する可能性がある。

 解散が命令されれば、宗教法人格を失う。税制面の優遇はなくなるが、宗教活動は続けられる。

 被害者を支援する弁護士は、救済に使えるはずの教団財産の隠匿や散逸を防ぐ措置を求めている。検討を急ぐべきだろう。

 今回の請求に至る経緯の検証は欠かせない。憲法が保障する「信教の自由」を踏まえ、厳正さと透明性が求められてきた。政府は可能な限り情報を公開した上で、国民に説明する責任がある。

 今年施行した不当寄付勧誘防止法は、不安につけこむような寄付を防止できているのか。政府は昨年、子どもへの宗教活動の強制は虐待とする通知を出したが、現場でどう対応しているのか。今回の教訓を生かすのは、これからだ。

 何より、銃撃事件で明るみに出た自民党と旧統一教会の関係は、全容解明に程遠い。岸田文雄首相は「関係を絶つ」と宣言したが、議員の自己申告に委ねたままである。今請求とは別問題であり、幕引きは許されない。安倍氏と教団の関係をはじめ徹底した調査による関係清算へ、踏み出すべきだ。

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