〈いしかわ百万石文化祭2023〉皇室最高峰の美、金沢に 三の丸尚蔵館展、14日から一般公開

三の丸尚蔵館収蔵品展の開会式でテープカットする関係者=金沢市の石川県立美術館

  ●県立美術館、国立工芸館で開会式 国民文化祭開幕へ

 14日に開幕するいしかわ百万石文化祭2023(第38回国民文化祭および第23回全国障害者芸術・文化祭)のメイン行事「皇居三の丸尚蔵館(しょうぞうかん)収蔵品展 皇室と石川―麗しき美の煌(きら)めき―」(北國新聞社共催)の開会式・内覧会は13日、金沢市の石川県立美術館と国立工芸館で行われた。出席者は、里帰りした加賀藩前田家ゆかりの名品など国宝8点を含む日本美術最高峰の116点を鑑賞し、皇室と美術王国・石川の縁(えにし)を感じ取った。両館で14日に一般公開が始まる。

 開会式は雅楽「越天楽(えてんらく)」の演奏で幕を開け、国民文化祭実行委員会長の馳浩知事が、皇室の名品がまとまって石川で展示される初の機会だとし「日本に伝わる麗しい美と前田家が受け継いできた美を実感できる素晴らしい展覧会であり、石川の文化の奥深さを発信したい」と式辞を述べた。

 続いてあいさつに立った実行委文化芸術顧問の飛田秀一北國新聞社会長は、尚蔵館展が3年前、当時首相だった菅義偉氏とのインタビューで菅氏が開催の方針を示し、実現に至ったことに触れ、「質、量ともに地方で例をみない規模であり、地元としてこれに過ぐる喜びはない。皇室とのつながりや文化土壌の厚みを改めて実感できる絶好の機会で、県内外の多くの人に日本美術の粋を感じ取っていただきたい」と期待した。

 池田憲治宮内庁次長、今泉柔剛文化庁審議官、島谷弘幸国立文化財機構理事長があいさつし、前田家18代当主の前田利祐氏が「名品がそろう三の丸尚蔵館には、展示替えのたびに喜んで足を運んでいる。このチャンスに石川の皆さんもぜひご覧になってほしい」と祝辞を述べた。岡田直樹参院議員、焼田宏明県議会議長も祝辞を贈り、関係者がテープカットした。式後、出席者は2会場を巡った。

 116点のうち尚蔵館収蔵品は90点で、このほか前田育徳会、県立美術館、国立工芸館などから前田家ゆかりの秀作が並ぶ。尚蔵館収蔵の国宝は、前後期2幅ずつ展示する伊藤若冲(じゃくちゅう)の花鳥画「動植綵絵(どうしょくさいえ)」、「やまと絵絵巻」の最高峰と名高い高階隆兼(たかしなたかかね)の「春日権現(かすがごんげん)験(げん)記絵(きえ)」など4点となる。

 万葉集の古写本で、国宝に指定されたばかりの尚蔵館収蔵「金沢本万葉集」(巻第二、第四残巻)は前田育徳会所蔵の国宝「金沢本万葉集」(巻第三、第六残巻)と並べて公開する。

 会期は11月26日まで。両館では、国民文化祭スペシャルアンバサダーの狂言師・野村萬斎さんとアンバサダーの俳優・田中美里さん(金沢市出身)による音声ガイドが提供される。

 

  ●主な展示品

【国宝】

・金沢本万葉集巻第二・第四残巻(三の丸尚蔵館蔵) 藤原定信

・金沢本万葉集巻第三・第六残巻(前田育徳会蔵) 藤原定信

・喪乱帖 原跡・王羲之

・孔侍中帖 原跡・王羲之

・刀(名物太郎作正宗)

・剣(銘吉光)

・春日権現験記絵巻八 高階隆兼

・動植綵絵(大鶏雌雄図、群鶏図、薔薇小禽図、牡丹小禽図) 伊藤若冲

【重要文化財】

・扇散蒔絵手箱

・百工比照(鳥籠、虫籠、花籠の釘隠4点)

【目玉作品】

・源氏物語図屏風 狩野探幽

・太平楽置物 海野勝珉

・唐花唐草文象嵌花盛器 金沢銅器会社

・鳳凰菊文様蒔絵飾棚、鶴桐文様蒔絵飾棚 島田佳矣ほか

・鷺蒔絵筥 松田権六

・加賀地方花鳥図刺繍壁掛

 

  ●両陛下15日来県 金沢で開会式出席

 天皇、皇后両陛下は、いしかわ百万石文化祭2023の開会式出席のため、15日から1泊2日の日程で石川県を訪問される。両陛下そろっての県入りは1998年8月の「第10回全国農業青年交換大会」以来25年ぶりで、2019年5月の即位後では初めて。滞在期間中、百万石文化祭に参加する県民と交流する。

 皇后さまの体調に支障がある場合は天皇陛下単独での訪問となる。天皇陛下が石川を訪れるのは、皇太子時代の18年8月に珠洲市で開かれた「第17回日本スカウトジャンボリー」以来5年ぶりとなる。

 両陛下は15日午前、小松空港に到着する。午後に金沢市のいしかわ総合スポーツセンターで行われる百万石文化祭の開会式に臨み、オープニングステージを鑑賞する。その後、同市のANAクラウンプラザホテル金沢で馳浩知事から県勢概要の説明を受ける。

 16日は午前に同市の県立音楽堂で開かれる「きらめく個性! 全国障害者作品展」を視察し、同所でミニ和傘作りのワークショップに参加する明和特別支援学校の生徒と交流する。午後は同市の県立図書館で「石川ゆかりの文学朗読劇」に出演する県内高校生の稽古を見学後、小松空港から特別機で帰京する。

 国民文化祭は、国民体育大会、全国植樹祭、全国豊かな海づくり大会と合わせて「四大行幸啓(ぎょうこうけい)」と呼ばれる。石川での開催は1992年以来2度目となる。

「源氏物語図屏風」を鑑賞する開会式出席者=県立美術館
天皇陛下
皇后さま

© 株式会社北國新聞社