県議52人から撤回請求…「虐待禁止条例」案を撤回し、埼玉県議会9月定例会閉会 議員提案の在り方検討へ

埼玉県議会、条例案撤回し閉会

 埼玉県議会の9月定例会は13日、高齢者・障害者施設の新型コロナウイルス感染症対策など165億1058万円の一般会計補正予算案を含む計28議案を可決し、閉会した。本会議では、自民党県議団(田村琢実団長)が提出した県虐待禁止条例の一部改正案の撤回が承認された。

 同日の議会運営委員会(細田善則委員長)では、中屋敷慎一県議(自民)が「子の放置は危険と再認識し、意識改革を促したい思いだったが、多くの県民、団体から意見を受けた」と述べ、撤回への理解を求めた。

 伊藤初美県議(共産)は「拙速な審議を反省すべきだ。今後、議員提出に当たり超党派の作業グループなどを検討するか」と質問し、小島信昭県議(自民)は「今まで議員提出議案は正規の手続きを経て可決されてきた」と反論。議員提案の在り方は各会派で検討されることとなった。また、6月定例会で議決した中国・山西省への訪問団派遣も中止とされた。

 本会議で立石泰広議長は、田村団長ら52人の県議から「条例の主旨が理解され、社会に受け入れられる必要がある」と撤回請求があったと説明。県議から異議はなかったが、傍聴席から禁止されているやじが飛び、混乱が生じる一幕もあった。

 改正案は子どもだけの登下校や留守番などを放置による虐待と定め、「保護者に精神的・経済的負担を強いる」とオンライン署名活動などの反発が起きた。

 6日の福祉保健医療委員会では賛成に回っていた公明党県議団(蒲生徳明団長)は、13日に予算要望のため大野元裕知事を訪ね、所属県議らが「仕切り直して県に迷惑をかけないようにする」「子育ての喜びや安心のため、規制ではなく支えていきたい」「委員会ではお騒がせした」と反省を口にした。

 大野知事は閉会後、記者団の取材に「『子育てしにくい県』という誤った印象を与えかねない」とし、子育て支援の拡充の必要性を強調。一方で「地方議会一般として議員提出条例は未成熟な部分も見られる」とし、「私が所属していた参議院では、意見書やヒアリングなどのルールが定められていた。地方議会にはルールがないので、検証可能な形とすることを検討する時期に来ているのではないか」と指摘した。

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