裏と表

 「裏」という字を見つめると、その中に「表」という字が潜んでいる。「表」よりも「裏」はずいぶん複雑な字面をしている▲多額な献金集めは不当で、悪質で、組織的で、ずっと続けられてきた、という証拠を5千点ほど積み上げたという。文部科学省が旧統一教会の解散命令を東京地裁に請求した。教団の複雑な“裏の顔”がようやく正面から問われることになる▲信者が「家庭が幸せになれるセミナーがある」と勧誘してきた。誘われた女性は息子を13歳で亡くしており、「子どもが霊界で苦しんでいる」と言われて心が揺らぐ。やがて献金や物品の購入で2500万円を支払った…▲すでに脱会し、示談となった人の証言の一つだが、「幸せになれる」という表向きの話が、悩みや苦しみに乗じて不安をあおり、途方もない献金を求めるという“裏の手法”に転じた例だろう▲解散命令が確定するまでに、教団が財産隠しを急がないか。命令が確定し、教団が宗教法人格を失ったとしても、宗教団体として残ることはできる。多額の献金を求め続けないか。組織は別にして信者一人一人や2世をどう守るか。問題は山とある▲「幸」という字の中には、つらいの「辛」が隠れている。「幸」に見えたものが、本当は「辛」だった…。そんな人や家族をもう生みたくない。(徹)

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