アラ不思議!「左わき腹始動」でシャフトクロスも左手首の背屈も一挙解消

1年以上もシャフトクロスとスライスに悩み続ける受講者のスイングを解析

テークバックで腕や手首のカタチを改善したいという方も多いと思いますが、そこだけにフォーカスすると、実はまったく直らないケースが多いものです。今回は、トップでシャフトがクロスして慢性的なスライスに悩んでいる方が登場。その根本的な原因を直接改善することで、間接的にテークバックが整いました。

今回の受講者は…

「一時期はフックばかりの時もありましたが、このところスライスにずっと悩んでいます。テークバックでシャフトクロスしながら上げてフェースが開くことは分かっているのですが、左手首が甲側に折れないように意識して改善しようといろいろ試しても、ここ1年半くらい解決の糸口がまったくつかめません…」(宮下さん ゴルフ歴20年、平均スコア92)

モーションキャプチャーで体の動きを分析すると…

左手首が甲側に折れてしまうのは“悪いシャフトクロス”

トップでのシャフトクロスにも、良いシャフトクロスと悪いシャフトクロスがあります。良いものはフェースの過剰な開きがなく、その人の体の柔軟性によってクロスしてしまうもので、たとえクロスしても安定してフェース面が戻り、インパクトできるものです。一方、悪いクロスは左手首がトップで甲側に折れてフェースが大きく開き、インパクトでフェースを戻せずスライスしたり、小手先でボールをつかまえようとしてフックしたりと、不安定なショットがずっと続きます。

宮下さん(黒線)は左手首のヒンジ(手首の甲側、手のひら側への動き)がトップで大きく甲側へ折れる。赤線はプロのデータ

インパクトの瞬間のヘッド軌道は、ストレート軌道で2度アッパーのフェード系ですが、軌道に対して、フェースが約5度も開いて当たっています。モーションキャプチャーで、左手首の動きを追ってみると、異常な動きをしていることがわかります。ハーフバックまでは、フェースを開かせない意識から手のひら側に折れていきますが、そこからトップにかけて、急激に甲側に折れていくのが分かります(赤線がプロ、黒線が受講者)。

ハーフウェイバックでのグリップエンドの向きに注目(左=森田理香子プロ、右=受講者)

プロとの比較をしてみましょう。ハーフウェイバックでプロのグリップエンドがお腹を指しているのに対して、宮下さんのグリップエンドは、お腹を外れて飛球線方向に向いていますね。これは、体の回転が浅く、腕だけでクラブを上げているからです。腕だけで上げると、テークバックで左腕が大きく外旋しやすくなり、左手首を甲側に折らないように意識していても、トップに至るまでにクラブの勢いによって左手首が甲側に折れてしまいます。ここでいったん、今までの腕や手首の意識をすべて忘れましょう。真っ先に、取り組むべきは、スイング始動時の体の意識です。

左わき腹からの始動でシャフトクロスを即解消

左腰を1~2cm左にスライドしてドライバーのアドレスを改善。少し左腰が高くなるのが理想

まず、気になるのはスイングに入る前のアドレス。特にドライバーでは、胸が少しターゲット方向に開いた形になっていて、左足体重になっています。その状態から大きくクラブを振り上げようとすれば胸は回らず、腕や手首を過剰に使ってしまうことになります。ドライバーでは、今までの構えから腰だけを1~2cmくらい飛球線側にスライドさせてアドレスしてみましょう。こうすることで胸が開きにくくなり、左肩よりも右肩が少し下がったドライバーの理想的なアドレスになります。

左わき腹をねじる始動で腕や手首の悪い動きを解消

そして、今回の最重要課題が体を使って始動すること。腕や手首は何もせず、左のわき腹を右にねじる意識でスイングを始動してみてください。そうすると胸が十分に回ってハーフウェイバックまでグリップエンドがお腹を指し続けます。そこからはクラブの惰性に従ってトップに向かい、体の動きに腕や手首がリードされて、勝手に自然なトップ位置に収まります。左腕が余計な外旋をすることもなく、左手首は甲側に折れずにトップを迎えることができるのです。腕や手首の動きは自分で意識的にどうこうするものではなく、正しい胸の動きに導かれていくものなのです。

トップでシャフトクロスしていた受講前(左)と比べ、受講後(右)は左手首の折れもなくクラブが良い位置に収まっている

1年半も悩まれたとのことですが、30分程度のレクチャーですぐに腕や手首の動きが劇的に良くなりました。インパクトの瞬間のヘッド軌道は、ドライバーで理想的なインサイドアウトのアッパー軌道になりました。スライスが解消して強いストレートボールになりましたね。

読者の皆様も、腕や手首の動きに悩んだとしても全く解消しないのなら、それを一旦全部忘れてアドレスや始動を根本的に見直すことから始めてみてください。では、今回のレッスンを動画でおさらいしましょう。

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