存在感薄く…訪日客受け入れに課題 長崎・諫早市 体験型観光の充実目指す

多言語に対応した諫早や島原半島の観光パンフレット

 新型コロナウイルス水際規制の緩和や円安を背景にインバウンド(訪日客)が回復しつつある中、長崎県諫早市もその需要を取り込もうとしている。ただ、新幹線や高速道路網が整備され島原半島の出入り口でもある交通の要衝にしては、観光地として存在感は薄く、諫早駅降車後の利便性など課題は少なくない。市内滞在時間を増やす上で期待される、体験型観光の商品開発は始まったばかりだ。
 市によると、市内ホテル・旅館などに宿泊した外国人は、新型コロナ禍前の2019年に延べ3870人だったのが、21年は同793人に減少。22年は同1506人にまで戻した。主要な市内観光地の訪問数は把握していない。
 諫早駅構内の観光案内PRコーナーを訪ねる外国人も増えた。昨年は毎月10人未満だったが、今年7、8月は各50人前後に。運営する諫早観光物産コンベンション協会によると、今春以降、東南アジア方面からの観光客が目に見えて増加。その多くが電車やバスなどの公共交通機関を利用して雲仙や島原などを目指す。
 同コーナーには、地元や島原半島の見どころを多言語で紹介した観光パンフレットを各種そろえ、職員はスマートフォンの翻訳アプリで応対している。
 交流サイト(SNS)で人気が高まったフルーツバス停(同市小長井町)へのアクセス方法の問い合わせが増えているが、駅から向かうバスは約1時間に1便のみ。同協会担当者は「フルーツバス停をメインにしたミニツアーでもあれば」と惜しむ。着替えや雨具を買う場所もよく尋ねられるが、同駅周辺には日用品を扱う店が少なく、案内に苦慮しているという。
 一方、外国人向けの体験型観光商品を巡っては、バスやタクシーを運行するラッキー自動車(長崎市)が旅行業大手エイチ・アイ・エス(HIS)と協力。和装姿で街並み散策や名物料理を楽しめる日帰りタクシー観光プランを市内でも計画し、年内の販売開始を目指している。
 いさはや国際交流センター(佐藤徹郎会長)も独自で、花魁(おいらん)などの和コスプレ体験や酒蔵見学といった日本文化を体験できる商品を企画。7月から受け付けをスタートしたが、利用はまだない。同センター事務局の岩本頼子さんは「他にはない諫早ならではの魅力をどれだけ発信できるかが課題」と話す。
 長崎空港の国際線(上海線、香港線)が早ければ10月末にも一部再開する見通し。国や地域によって異なる訪日客の動向やニーズを分析し、少しでも長く滞在したくなるような「魅力」を提供できるか-。官民を超えた取り組みが問われている。

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