〈いしかわ百万石文化祭2023〉皇室の名品に目凝らす 三の丸尚蔵館展が開幕

「加賀地方花鳥図刺繍壁掛」などの名品に見入る来場者=14日午前9時45分、石川県立美術館

  ●前田家ゆかりの国宝など116点

 国民文化祭のメイン行事「皇居三の丸尚蔵館(しょうぞうかん)収蔵品展 皇室と石川―麗しき美の煌(きら)めき―」(北國新聞社共催)は14日、金沢市の石川県立美術館と国立工芸館で開幕した。一般公開を待ちわびた大勢の愛好者や家族連れが訪れ、伊藤若冲(じゃくちゅう)の花鳥画「動植綵絵(どうしょくさいえ)」や加賀藩前田家ゆかりの名品など国宝8点を含む国内最高峰の116点を鑑賞し、豊潤な美の世界に浸った。

 三の丸尚蔵館の地方巡回展として、質、量ともに最大規模の展覧会となる。116点のうち尚蔵館収蔵品は90点で、このほか前田育徳会、県立美術館、国立工芸館などから前田家ゆかりの秀作26点が並ぶ。

 開館とともに、県立美術館と国立工芸館には列をなして来場者が訪れた。県立美術館では、昭和の大礼に際して金沢市が皇室に献上した2枚組の「加賀地方花鳥図刺繍壁掛」などに視線が集まった。加賀平野の野鳥50種がひしめき合うように描かれた逸品に来場者が目を細め、同市の会社員、山本正幸さん(47)は「時代を超えて、地元にゆかりのあるお宝を見ることができて感動した」と語った。

 国立工芸館では、1924(大正13)年に、後の昭和天皇の結婚を祝って総理大臣ら文武官一同が献上した「鳳凰菊文様蒔絵飾棚(ほうおうきくもんようまきえかざりだな)」と「鶴桐(つるきり)文様蒔絵飾棚」が地方で初めて公開されている。金沢出身の島田佳矣(よしなり)が図案を担当し、ふんだんに蒔絵が施された2点に愛好者が目を凝らした。

 両館を回った白山市の会社員、加藤優果さん(24)は「2館にまたがって展示できるほど名品が多いことは、県民として誇らしい」と笑顔を見せ、友人の長沖虹佳さん(23)は「地元ゆかりの秀作に親しみを感じるとともに、その技術の高さに圧倒される」と話した。

 会期は11月26日まで。入場料は一般1500円、大学生千円、高校生以下は無料。両館では、国民文化祭スペシャルアンバサダーの狂言師・野村萬斎さんと田中美里さんによる音声ガイドが800円で提供される。

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