旬のお魚、うまみそのまま離乳食に ターゲットは共働き家庭 熟成方法を習得、鍼灸師が新事業

妹尾さんが販売する魚の加工品=明石市王子

 兵庫県明石市で介護施設への訪問鍼灸(しんきゅう)などを行っている男性が、全く畑違いの仕事も始めた。市場で売れ残ったりサイズが小さくて廃棄されたりする魚を活用し、介護食や離乳食として加工、販売する取り組み。男性は「子どもたちに魚のおいしさを知ってもらいながら、フードロス削減の貢献にもつながる」と話す。(谷川直生)

 訪問鍼灸やマッサージ業の会社「メディカルシー」(同市王子2)を経営する妹尾俊勝さん(30)。仕事や自身の子育て経験から、介護食や離乳食を一から調理する大変さを知った。趣味が釣りだったこともあり、漠然と魚を扱う事業を模索していた。

 2018年のある日、動画投稿サイト「ユーチューブ」で見た血抜きの方法を紹介する動画に衝撃を受けた。腎臓や動脈に真水を流して血を溶かすことで、魚の腐敗を遅らせ、長期熟成を可能にするもので、漁獲から数日が経過しても効果があるという。

 「釣った魚がいつでもおいしく食べられる。これだと思った」と妹尾さん。血抜きを習得し、新型コロナ禍で鍼灸の仕事が減って余った時間に各地の漁港や市場を巡るなど、仕入れ先の開拓も進めた。

 今年8月、約4年半を経て「子魚くん」のブランド名で事業化。サイズの小さい旬の魚や、売れ残った魚を仕入れ、切り身やフレークに加工して冷凍で販売する。明石のタイや高級魚のクエなどを扱うことも多く、うまみを閉じ込める瞬間冷凍にもこだわっている。

 現在は離乳食に重点を置く。ターゲットは「共働きで忙しく、タイムパフォーマンス(時間対効果)を重視する家庭」と言う。切り身は15パック(1パック15グラム)1万3200円(税込み)、フレークは100グラム1100円(同)からと高めの値段設定だが、妹尾さんは「良い素材で良いものを作っている自信がある」と胸を張る。

 子魚くんの通販サイトで販売している。

© 株式会社神戸新聞社