ルパンと次元が取り合った「あのパスタ」 味も見た目も宮崎アニメを“再現” 丹波のミニシアター

名作アニメ映画を意識したパスタと、考案した近兼拓史さん=ヱビスシネマ。

 不朽の名作とされる日本の長編アニメ映画で、大泥棒とその相棒が取り合った料理。ミートボール入りの「あのパスタ」と言えば伝わるだろうか…。その見た目を再現した一品を、兵庫県丹波市氷上町成松の映画館「ヱビスシネマ。」が提供している。(那谷享平)

 商品化のきっかけは昨年5月、同映画館であった「ルパン三世 カリオストロの城」(宮崎駿監督、1979年)の上映。「作品世界を2次元のスクリーンだけでなく、3次元でも体験してほしい」。そんなコンセプトで、支配人の近兼拓史(ちかかねたくし)さん(61)が、劇中の食事シーンをイメージしてレシピを考案した。

 「味は映画の場面からの想像」と近兼さん。映画館の料理と侮るなかれ。映画監督やバイクのライダーなどさまざまな肩書を持つ近兼さんは、過去にイタリア料理店の経営も経験している。「凝り性な性格」もあって料理は得意といい、味は本格的だ。

 合いびきミンチのトマトソースは、2日間煮込んだ特製。隠し味に丹波産梅のシロップを入れ、ほどよく酸味を利かせている。これが、鶏がらスープで煮込んだ甘めのミートボールによく合う。お好みで粉チーズも用意している。

 「うちの映画館は、1日かけて3本くらいの映画を続けて鑑賞するお客さんが多い。上映と上映の間の休憩中にさっと食べられるよう、くせのない味に仕上げた」とのこと。作中の描写を意識してやや大盛だが、確かにこの味ならルパンや次元大介さながらに、がつがつと食べられそう。

 実は当初は「カリオストロ-」の公開期間中に限定販売するつもりだったという。しかし、思いの外、来館者たちの心に刺さり、予想以上の注文数に。カレーくらいしか定番メニューがなかったこともあり、取り扱いを続けることにした。発売から1年がたった今も、人気に陰りは見えない。

 「あの作品を見たことがある人は、みんな食べてみたかったんでしょうねえ。宮崎監督のアニメに出てくる食べ物は、どれもすごくおいしそうだから」

 都市部のシネコンのような映像に合わせて動く椅子はなくても、五感に働きかける映画体験は工夫次第。ミニシアターならではの機転が光る。パスタは税込み700円。同映画館TEL0795.88.5910

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