何事もなく帰って来てほしい…/原ゆみこのマドリッド

「代表でも休めないのね」そんな風に私が同情していたのは土曜日、9月のparon(パロン/リーガの停止期間)が終わってから、地獄の7連戦を息も絶え絶えに切り抜けたアトレティコの10月各国代表戦出向選手たちの出場状況を調べていた時のことでした。いやあ、実を言うと、今回は負傷者が多いのが逆に幸いして、6人しか、招集されていないんですけどね。スペイン代表に1人参加しているモラタのことは後で話すとしても、金曜に1-2で勝ったユーロ予選オランダ戦でグリーズマン(フランス)は後半43分までプレー。その日の深夜にあったW杯南米予選でもデ・パウルが後半ロスタイムまで、モリーナもフル出場で、アルゼンチンがパラグアイに1-0で勝利するのに貢献することに。

スロベニアのキャプテンでもあるGKオブラクはもちろん、土曜のフィンランド戦にフル出場し、3-0と完封勝利を挙げていますし、唯一、ベンチにも入らなかったのは、筋肉痛でここ3試合、クラブのお勤めをお休みしながら、モンテネグロ代表に招集されたサビッチだけで、まあ、彼らの木曜のレバノン戦は親善試合でしたからね。来週火曜のセルビア戦ではプレーするんじゃないかと思いますが、リーガ再開の10節セルタ戦は土曜開催。その先はCL3節セルティック戦を挟んで、また3連戦となるため、出ずっぱりの選手はまだまだ体力の限界への挑戦が続く?

それだけに今週は火水木とマハダオンダ(マドリッド近郊)で練習をして、金曜から3連休に入ったコケ、サウール、ジョレンテ、サムエル・リノ、アスピリクエタ、ビッツェルらには気力、体力の回復100%を期待。ええ、シメオネ監督もこの週末は家族でトルコに旅行し、現在はエユプスポル(2部)の監督を務めているアルダ・トゥランを訪問していましたし。ケガのリハビリ中の選手たちもコレア、バリオス、ヒメネス、ソユンチュらは代表戦明けの試合に間に合いそうな感じになってきましたし、あとはレマル、メンフィス・デパイ、レイニウドだけとなれば、来週土曜のセルタ戦から、少しは先発ローテーションもできるのでは?ただし、そのためにはモラタ、グリーズマンを筆頭に代表で稼働している選手たちが無傷で戻って来ることが大前提となるんですが…。

え、まだまだ先のリーガより、今はスペイン男子代表の方が気になるって?そうですね、今週は月曜にラス・ロサス(マドリッド近郊)のサッカー協会施設で合宿初日の公開練習を見学した後、翌日からのセッションは全て非公開。水曜にはチームもセビージャに移動してしまったため、私も遠巻きに見守っているしかなかったんですが、彼らは木曜夜にユーロ予選5試合目となるスコットラント戦をカルトゥーハで迎えることに。

いやあ、9月のジョージア、キプロス戦がどちらもgoleada(ゴレアダ/ゴールラッシュ)勝利だったため、セビージャまで遥々、応援に駆けつけた4000人のスコットランド人は別として、この日もゴール祭りを期待していたファンは多かったはずなんですけどね。ミケル・メリーノ(レアル・ソシエダ)のシュートがポストに弾かれたり、モラタのゴールが久々にオフサイドで認められなかったりはあったんですが、やはりここまで5連勝でグループ首位を張っている相手の守備は堅く、前半のスペインは得点できなかったんですよ。

そこでデ・ラ・フエンテ監督は後半頭から、足の付け根を痛めていたバルデ(バルサ)をフラン・ガルシア(レアル・マドリー)に、そしてオジャルサバル(ソシエダ)を先週末のバルサ戦での2ゴールという活躍により、緊急追加初招集となったブライアン・サラゴサ(グラナダ)に代え、梃入れを図ったんですが、14分にはマクトミネイ(マンチェスター・ユナイテッド)のFKが直接ゴールに入ってしまったから、さあ大変!即座に2-0で完敗した3月のグラスゴーでの悪夢を思い出すことになったんですが、大丈夫、この日はツキがありました!

そう、主審がVAR(ビデオ審判)モニターで確認して、ゴールが入る際、ヘンドリー(アル・イテファク)がオフサイドの位置にいた上、GKウナイ・シモン(アスレティック)を押して邪魔していたため、ノーゴールにしてくれたから。それもあってか、デ・フエンテ監督は22分にはそのFKの原因を作り、イエローカードももらったカルバハル(マドリー)をヘスス・ナバス(セビージャ)、ミケル・メリーノをサンセット(アスレティック)へと代えて、先制点奪取を目指すことに。

その、「Lo primero era desgastar al rival y luego aprovecharlo/ロ・プリメーロ・エラ・デスガスタール・アル・リバル・イ・ルエド・アプロベチャールロ(まずは敵を消耗させてから、それを利用する)」というデ・ラ・フエンテ監督の作戦を忠実に遂行してくれたのは、今や、チームで唯一、2010年男子W杯優勝を経験している、あと1カ月程で37才になるナバスで、28分には右サイドを上がって、ゴール前に正確無比なクロス。それに頭で合わせたのがモラタだったんです。いやあ、彼は今季開幕してから、ついぞ見たことのない程、ゴールづいていて、このGKガン(ノーリッチシティ)を破った先制点で、とうとう11試合11得点ですからね。

こちらは敵DFたちの後ろから抜け出したため、オフサイドにもならず、カルトゥーハのファンも心おきなくゴールコールでモラタの名前を叫ぶことができたんですが、その瞬間から、アトレティコの試合で過重労働が続いている彼を早く休ませてくれと、私は祈るばかりに。その願いが叶ったのは39分になってからで、ようやくホセル(マドリー)と交代して、ベンチに戻ったんですが、同じ7連戦でもそこまで出ずっぱりではないお隣さんのCFも41分にはスペインの2点目に貢献してくれます。ええ、スコットランドのエリア近くでボールを出そうとしていたパターソン(エバートン)が転び、そのボールを奪ったホセルがゴール前にラストパス。

それをその日、フラン・ガルシア、ブライアンに続いて、3人目のA代表デビュー選手となったサンセットがポーチャス(ワトフォード)と一緒にゴールに蹴り込んでくれたため、終盤、苦しむことがなくなったのは良かったかと。幸い、試合後のインタビューで当人は、「Creo que la toco pero no sé si me han apuntado a mí el gol/クレオ・ケ・ラ・トコ・ペロ・ノー・セ・シー・メ・アン・アプンタードー・ア・ミ・エル・ゴル(ボールに触ったと思うけど、自分のゴールになったかはわからない)」と言っていたものの、得点者はサンセットと記録され、彼もデビュー戦で代表初ゴールを挙げたことになりましたしね。

そのまま2-0で勝利したため、スペインは3月の借りをしっかりスコットランドに返済。まだ消化試合が1つ多い相手が首位であるのは変わらないものの、次のノルウェー戦に勝てば、グループ2位以上が確定して、ユーロ2024本大会の切符を手に入れられることに。いやあ、昨年のW杯カタール大会の後、ルイス・エンリケ監督(現PSG)から、デ・ラ・フエンテ監督に代わり、ユーロ予選を1勝1敗でスタートした時はこの先、どうなるかと心配したものですけどね。6月にネーションズリーグ・ファイナルフォーで11年ぶりにタイトルを獲って自信がついたか、スペイン女子のW杯優勝セレモニーで起きたルビアレス前会長のセクハラキス騒動でサッカー協会だけでなく、デ・ラ・フエンテ監督までが批判に晒されていた9月のユーロ予選でも男子チームは2勝。

それも自身がU21代表監督時代に育てた選手も含め、若手を交えながら、ナバス、モラタ、カルバハルといったベテランの力を上手く使い、ここまで軌道に乗せたのは感心ですが、やっぱり難なのは負傷者がよく出ることでしょうか。というのも9月の代表戦でケガをしたアセンシオ(PSG)とダニ・オルモ(ライプツィヒ)はまだクラブの試合に出ておらず、もちろん、今回の招集リストにもいないんですが、このスコットランド戦後もバルデとニコ・ウィリアムス(アスレティック)が各所の痛みで離脱することに。実際、ニコも9月のスペイン代表でケガをして、ちょっと前に実戦復帰したばかりなんですが、初期リストの後、リーガ戦で負傷したジェレミー・ピノ(ビジャレアル)やジャマル(バルサ)はともかく、こういうのがクラブの監督たちが恐れるFIFAウィルスなんですよねえ。

おかげでアンダルシアの州都に連泊した後、翌金曜にエスタディオ・ヘスス・ナバス(セビージャの練習場)でチームがリハビリトレを行った時には早速、追加招集された左SBのペドラサ(ビジャレアル)が合流していましたが、こちらも初めてのA代表参加ですからね。セッション後はすぐにオスロへのフライトと慌ただしいのもありますし、日曜午後8時45分(日本時間翌午前3時45分)からのノルウェー戦では最近、マドリーでの出番が減っているフラン・ガルシアの独壇場になる?ハーランド(マンチェスター・シティ)やセルロート(レアル・ソシエダ)、ウーデゴール(アーセナル)らを抑えて連勝できるといいんですが、木曜はノルウェーもハーランドの2得点を含めて、0-4でキプロスに勝利。とはいえ、スペインも9月に同じ相手に6-0と一段上の大勝をしているため、その辺が自信になるかもしれません。

そして同じく今週はクラブで出番が少ない分、代表で埋め合わせすべく、モドリッチ(クロアチア)がトルコ戦にフル出場しながら、0-1で負けてしまったなんてこともあったのがマドリーで、いえ、これぞリーガ首位チームの余裕なんでしょうかね。バルデベバス(バラハス空港の近く)での練習は火曜からだったんですが、各国代表選手が13人と多勢なのもあったか、水曜からアンチェロッティ監督が不在に。故郷に近いパルマ大学で名誉博士号を授与されるセレモニーに出たりしていたんですが、まあ、「これから選手たちは私をミスターではなく、ドクターと呼ぶことができる」(アンチェロッティ監督)という冗談はさておき、アラバやギュレルが回復したチームの方はラウール監督がRMカスティージャとの合体セッションで指導していたよう。

ちなみにこちらの代表出向組で心配なのはやはり南米勢で、木曜に2-2と引分けたコロンビア戦にキャプテンとしてフル出場したバルベルデ(ウルグアイ)、金曜に1-1で終わったベネズエラ戦でプレーしたロドリゴとビニシウスは、スペインの来週水曜未明にウルグアイvsブラジル戦で激突してから、大西洋横断して帰還しないといけませんからね。土曜のセビージャ戦までに体力が回復するか微妙ですが、実はユーロ2024の開催国で予選免除されているドイツのリュディガーも今回は親善試合でアメリカ、メキシコと対戦するため、海を渡っているのが負担になりそうな。

とりわけCBはナチョの3試合出場停止で頭数不足に陥っているポジションですしね。となると、グリーズマンはもちろん、フランス代表のお勤めを火曜にスコットランドとの親善試合で終えるチュアメニにも万が一のCBヘルプに備え、デシャン監督に配慮をお願いしたいところかと。その一方で、マドリーを10試合10得点で牽引しているベリンガム(イングランド)は金曜に1-0で勝利した親善オーストラリア戦に出場せず。ユーロ予選は火曜のイタリア戦だけで戻って来ることになりますが、守護神のケパもスペイン代表では控えとまず、出番は回ってこないのは、アンチェロッティ監督にとっては有難いですよね。

そんな中、やはり来週土曜に迎えるベティス戦を目指して練習を続けていた弟分のヘタフェには朗報があって、昨季終盤にヒザの靭帯を断裂し、長期リハビリ中だったエネス・ウナルがとうとう、ボールを蹴れるまでに回復。いえ、実戦復帰までにはまだ時間がかかるんですけどね。同じくプレシーズンから、ずっとリハビリをしていたルイス・ミジャの方は今週、チーム練習に合流したため、早ければ、10月中には戻ってこられるかもしれません。逆に来週日曜にラル・パルマス戦を迎えるラージョからは今のところ、特にニュースは伝わってこないんですが、とうとう、この土曜からはスペインも真夏日が終了。気温が秋らしくなってきたため、どのチームも練習が捗るんじゃないでしょうか。


【マドリッド通信員】 原ゆみこ
南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。

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