「あなたに関係ない」客に冷たくあしらわれても…ここまでやる、特殊詐欺犯VSコンビニ店員の攻防 兵庫・三田

柱谷昌彦署長(右端)から感謝状を受け取った(左から)片山由紀さん、高瀬喜大さん、川越由紀子さん=三田署

 兵庫県三田市内のコンビニ店3店舗が8月に相次いで特殊詐欺被害を未然に防ぎ、三田署から署長感謝状が贈られた。うち1件は2店舗の連携プレーで高齢女性の電子マネー購入を引き留め、瀬戸際で被害を食い止めた。(尾仲由莉)

 

2店舗が連携して説得

 8月9日昼ごろ、80代の女性がセブン-イレブン三田東本庄店を訪れ、30万円の電子マネーカードを購入しようとした。「何に使われるんですか」。高額な金額を怪しんだ従業員の川越由紀子さん(60)が尋ねたが、女性は「私の買い物なんであなたには関係ない」と言い放つと、かかってきた電話に出ながら同店を出ていってしまった。

 電話の指示に従う様子に詐欺を確信した川越さんは、「最も近い相野駅前店に行くかもしれない」と、本部を介して約2キロ西にあるセブン-イレブン相野駅前店に連絡した。

 川越さんの予想通り、1時間もたたないうちに女性が相野駅前店にやってきた。連絡を受けた店長の高瀬喜大さん(28)が説得したが、女性は納得できずに再び電話しながら店を出ようとした。高瀬さんは何とか女性を引き留め、三田署に通報。署員の到着を待っている間も、女性の携帯電話が何度も鳴ったという。高瀬さんは「川越さんが連絡を入れてくれたおかげですぐに女性に気付き、引き留めることができた」とほっとした様子だった。

 高瀬さんは8月27日にも、同様に電子マネーカードを購入しにきた高齢男性に声をかけ、特殊詐欺被害を防いだ。

 

電話を取るなら子機で

 8月16日にはローソンウッディタウン中央店の責任者片山由紀さん(51)が、60代女性の特殊詐欺被害を防いだ。片山さんが感謝状を受け取るのは1月に続いて今年2度目。パソコンが突然壊れたと言い、修理のために電子マネーカードを購入しようとするやり方が前回と全く同じで、すぐにピンときたという。

 片山さんは過去に悔しい思いをしたことがあった。店にかかってきたクレームの電話を事務所で対応している間に、客がATMで現金を振り込んでしまっていた。コンビニの外から見張っていた男が、店員の注意の目をそらす目的でうその電話をかけてきたとみられる。片山さんは「従業員には電話はなるべく子機で取り、ATMに常に気を配るよう呼びかけている」と語った。

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 同署によると、市内での特殊詐欺の被害件数は昨年7件あり、うち6件がキャッシュカードをだまし取られる「キャッシュカード詐欺盗」だった。一方、今年は9月末までに7件の被害があり、「架空料金請求詐欺」2件、「預貯金詐欺」2件、「還付金詐欺」2件、「キャッシュカード詐欺盗」1件と手口が多様になっている。

 また、特殊詐欺を未然に防いだ数は今年8月までで20件に上り、そのうち8件はコンビニで最多だった。

 セブン-イレブンの2人は「役に立ててうれしい」「高齢の人の場合は積極的に声をかけたり情報を他の従業員と共有したり、これからも被害防止に貢献していきたい」と笑顔を見せていた。

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