カヌー・浦田、亡き祖母にささぐV 国体カヌー、会期中に訃報

カヌースプリント成年女子カヤックシングルを制した浦田選手=鹿児島県伊佐市菱刈カヌー競技場

  ●いつも応援「一緒に戦った」

 晴れ渡った空の下、特別国体「燃ゆる感動かごしま国体」でカヌースプリント最終日の16日、浦田樹里選手(早大、水橋高OG、上市町出身)が躍動した。成年女子カヤックシングル200メートル決勝で、浦田選手が成年で自身初の優勝を飾った。「おばあちゃんと一緒に戦った」。13日に亡くなった祖母の力を感じて力強くパドルを操り、勝利に満面の笑みを浮かべた。

 カヌー競技第1日の13日。500メートルの予選を終えた直後、母から電話が入った。高知県に住む母方の祖母中村晶子さんが息を引き取ったとの連絡で、この日が祖母の89歳の誕生日だった。

 小学生でカヌーを始めてから、いつも応援してくれた。夏休みに祖母の家に遊びに行けば、一緒に川遊びをして楽しんだ。高校卒業後に行ったニュージーランドの武者修行も、五輪出場への挑戦も、祖母ら家族の励ましが力になっていた。

 突然の訃報。国体会場でも祖母を思い出すと涙があふれた。「結果を残して頑張っている姿を見せることが、私に一番できること。おばあちゃんのためにこぐ」。

 200メートル決勝はスタートから積極的に攻め、U23日本代表の福田りん選手(香川・武庫川女大)を0.3秒上回ってトップとなった。14日の500メートル(2位)で頂点を奪われた相手に雪辱を果たした。

 全てのレースを終え、祖母のことは「今も実感が湧かない」と目を赤くする。温かく見守ってくれた優しい顔を思い浮かべ、「高知に行った時はずっと晴れていた。きっときょうも、おばあちゃんが樹里のために晴れにしてくれた」と感謝した。

 浦田選手は来年のパリ五輪出場を目指し、小松市木場潟カヌー競技場を拠点にナショナルチームの練習に取り組んでいる。「おばあちゃんはいつも体のことを気にしてくれた。だから元気にオリンピックを目指して頑張ります」。空からのエールを受け、明るくにこやかに決意を口にした。

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