<ライブレポート>清水翔太、約3年ぶりの日本武道館でさらなる進化を見せつけた【Insomnia】ファイナル

清水翔太が2023年10月13日、14日に東京・日本武道館で全国ツアー【SHOTA SHIMIZU LIVE TOUR 2023 “Insomnia” supported by Taica】のファイナル公演を行った。

サブスク総再生回数24億回超。作詞・作曲・アレンジまですべて一人で行い、 デビュー15周年を超えた現在もJ-POPシーンのトレンドセッターとして最前線で活躍し続ける清水翔太。10thアルバム『Insomnia』を携えたツアーのファイナルは、約3年ぶりとなる日本武道館公演。「自分と向き合って、弱いところ、情けないところも含めて、自分のすべてを表現した」というアルバム『Insomnia』の楽曲を中心に、アーティストとしてのさらなる進化を見せつけた。

オープニングアクトして登場したのは、2005年生まれのシンガーソングライター・Leina。清水翔太がSNSでfeat.相手を探し、楽曲を制作するという【Lazy feat. XXX】企画に応募し、清水からその歌声を高く評価された彼女。武道館のステージでも臆することなく、表情豊かなボーカルを高らかに響かせてみせた。

開演時間を過ぎた頃から客席から“翔太”コールが巻き起こる。そして、ついにライブがスタート。オプニングSEとともにも“10、9、8……”とカウントダウンがはじまり、“0”になった瞬間にステージ上方から革張りの椅子に座った清水翔太が登場。アルバム『Insomnia』の1曲目に収められた「Loser」が放たれる。ステージには4人のダンサー。シンセベースの低音を活かしたバンドサウンドとソウルフルな歌声が広がり、「武道館! ジャンプ!」という煽りによって会場のテンションが一気に上がっていく。

さらにダンサブルな「Friday」では清水もダンスパフォーマンスに加わり、華やかな雰囲気を演出。そしてここからは、アルバム『Insomnia』の楽曲が次々と披露された。心地よいグルーヴを含んだボーカルともに<でも君を優先したい それが今のLife Style>というラインを描き出す「Life Style」、生楽器の音色を活かしたアンサンブル、大切な人と月の光を重ねたリリック、月を映し出す映像がひとつになり、ロマンティックな空間を生み出した「Moonlight」。「久々の武道館、俺のことを連れてきてくれてありがとう! 次の曲、思い切り一緒に歌いましょう」というMCに導かれた「Fallin」ではシンガロングが発生。そしてアルバムのタイトル曲「Insomnia」では、切なさと凛とした意志を同時に感じさせる歌声によって<一人じゃ生きれない>というフレーズをしっかりと刻んでみせた。観客のリアクションも最高。身体を揺らし、一緒に歌う姿からは「このライブを味わい尽くしたい」という強い思いが伝わってきた。(筆者の近くにいた男子高校生二人組は「やばい!」「泣く!」「かっこいい!」と叫びまくっていた)

「みんなと過ごした夏、生涯忘れないよ。ありがとう」という言葉を挟み、イントロが始まった瞬間に大きな歓声が沸き起こる。サングラスを外して歌唱されたのは、「ナツノオワリ」。観客の大合唱による<君に会えてよかった>という歌詞は、清水とオーディエンスの強いつながりをしっかりと証明していた。

ここからは清水が生ピアノを演奏。「Baby I love you so」では、スライ&ザ・ファミリー・ストーンを想起させるベースラインを軸にしながら、濃密なソウルミュージックを体現してみせる。強烈なエモーションをたたえた歌声も素晴らしい。「More than friends」の1番はピアノの響き語りで披露。バンドが加わった瞬間の解放感にもグッと引き寄せられた。原曲にアレンジを加えながら、ライブならではの表現をしっかりと引き出す。清水のスタイルは、このツアーによってさらなる向上を果たしたようだ。

観客の一人をステージに上げ、その人に向けて歌い上げるパフォーマンスで会場を盛り上げた「花束のかわりにメロディーを」を演奏した後、清水は観客に向けて、こう話した。

「ここまでの流れが良すぎて怖い。もちろん昨日も素晴らしかったけど、今日は本当にうれしい。みんなの歓声や応援が最高にうれしいし、気持ちよくやれています。ありがとう」

さらにアルバム『Insomnia』について、「自分に向き合って、自分のダメなところとか、嫌なところも作品に昇華して、みんなに届けることもやりたかった」と語り、「悲しみや苦しみもいっぱいちりばめられた作品だからこそ、こういうでっかい場所でやることにめちゃくちゃ意味があると思う」と告げると、客席から大きな拍手が送られた。

夏の終わり、“君”との別離をテーマにした「SUMMER」、鍵盤と歌によるアレンジで、都市生活者の孤独を浮かび上がらせた「東京ライフ」(KANの楽曲のカバー)とアルバム『Insomnia』の収録曲を続け、ライブは後半へ。

インタールードを挟み、デニムジャケットに着替えて再びステージに登場した清水は「Side Dish」「Nights」とアッパーチューンを連発。ペンライトの青い光が激しく動き、会場全体がダンスフロアへと変貌する。

「みんなと一緒にこの曲をやるのが本当に好きなんだよね」という言葉にリードされあた「My Boo」で会場の雰囲気は最高潮へ。大切な人たちとの別れをテーマにした「君がいない、僕らの日常」、そして、「アンコールもあるけど、まずは本編を締めさせて(笑)」と「マダオワラナイ」を披露し、本編は終了した。

清水とバンドメンバーがステージからいなくなると、客席からはデビュー曲「HOME」の合唱と“翔太コール”が。再びステージに戻った清水はピアノに座り、「HOME」を演奏。さらにバンドの音も加わり、大きな感動へと結びつく。これはもちろん、予定外の楽曲。いわば清水とオーディエンスの自然発生的なセッションだ。

さらに「みんなが喜ぶ隠れた名曲というか、アルバム曲、カップリング曲を選んできました」に告げ、「Shower」「Because of you」を披露。そして最後は、アルバム『Insomnia』の新曲のなかで、いちばん最初に制作されたという「Memories」だ。

ここで清水は「Memories」にまつわるエピソードを語った。中学生のときにいじめを予告され、学校から逃げたこと。「自分は歌手になるから別にいい」と思っていたけど、今振り返ると「自分から逃げていたな」と気付いたこと。そのせいか、地元(大阪府・八尾市)に対して複雑な感情を抱いていたこと――。

今年のはじめに清水は、地元に帰り、当時のクラスメイトと久々に再会した。そこで感じたことを曲として表現しなくちゃいけない。そんな思いで生み出されたのが「Memories」なのだ。

「みんなにも自分の嫌なところがあると思う。そんなみんなの逃げ場に俺がなる、そういう気持ちでいるから。今日は本当にありがとう」。感謝の言葉とともに演奏された「Memories」は、この場所にいたすべての人の心に強く刻まれたはずだ。

ライブの最後、「なにがあったとしても俺の才能はなくならないから。また必ず会いに来る。ありがとう」と力強く宣言。3年ぶりの日本武道館公演でアルバム『Insomnia』の素晴らしさをダイレクトに示した彼はここから、さらに充実した時期へと突入することになるだろう。

Text:森朋之
Photo:cherry chill will.

◎イベント情報
【SHOTA SHIMIZU LIVE TOUR 2023 “Insomnia” supported by Taica】
2023年10月13日(金)、14日(土) 東京・日本武道館

◎リリース情報
アルバム『Insomnia』
2023/6/28 RELEASE

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