「考える踊り」でチェコの名門へ バレエダンサー 德山凜さん(22)

チェコ国立バレエ団に入団する徳山さん=金沢市上堤町

  ●県出身者で初の入団

 金沢市上堤町のバレエ教室「エコール・ドゥ・ハナヨバレエ」に所属する德山凜(りん)さん(22)=同市高岡町=が12月、名門のチェコ国立バレエ団に入団する。3年間のドイツ留学で技術を磨き、7月に行われた国際コンクールで銀賞となるなど実績を残してきた。県出身者として初めて入団を決めた德山さんは「いつか主役になるために、毎日ステップアップしていきたい」と意気込む。

 12日、エコール・ドゥ・ハナヨバレエを訪ねると、県立音楽堂で11月16日に開かれる公演「不思議の国のアリス」(北國新聞社後援)に向けて練習に励む德山さんの姿があった。「見に来てくれる地元の人に、楽しさが伝わるような踊りを見せたい」と、手足の先まで洗練された動きを見せる。

 第7回全国バレエコンクール「プリ・ド・カナザワ2023」(北國新聞社、富山新聞社主催)で2年連続の優勝を果たした安田芽生さん(12)も同じ教室に通い、北陸学院中の後輩に当たる。德山さんのおばで、教室を主宰する華代さんは「芽生がひたすら練習に打ち込む頑張り屋さんだとすれば、凜は自分の中で考えて理解しながら、短期集中で練習する子です」と評価する。

 德山さんは2歳の頃からバレエを始めた。「好き嫌いの前に、気付いたらバレエをやっていた感覚。学校に行くのと同じくらい、当たり前の生活の一部でした」と振り返る。

  ●仏コンクールが転機

 13歳にして、若手バレエダンサーの登竜門として知られるフランスのショッソンドール国際コンクールで、最高賞となる金賞に輝いた。それが転機となり、15歳でドイツ・ミュンヘンに留学し、3年間ホームステイしながら、現地のバレエ学校に通った。

 ドイツやフランス、フィンランド、オーストラリアなど世界各国から集った生徒は全員、年上だった。「みんなかわいがってくれました」と德山さんは笑みを浮かべる。休日は友人と街中へ食事に出掛けるのが楽しみだった。

 しかし休日以外は、1クラス8人の少人数でバレエ漬けの日々を過ごした。「朝7時に家を出て、8時から計4時間ぶっ通しで踊る。それだけで一日が終わったと思うくらい疲れました」と語るほどの濃密な時間。くたくたの状態で、午後のドイツ語の授業も受けていた。

 限られた時間の中、どう練習すれば覚えられるか。「考えて踊る」ことができるようになったのもちょうどこの頃で、德山さんにとってバレエ留学は大きな収穫となった。

 もうひとつ、バレエの取り組み方が変わるような出来事に德山さんは出合った。7月、イタリア・リミニで行われたルドルフ・ヌレエフ国際バレエコンクールで、銀賞に輝いたのだ。德山さんが「世界が広がる発見の連続」と言うほどの、貴重な経験を得る。

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