雲仙の直売所「タネト」 長崎県初のグッドフォーカス賞 無農薬野菜を地元に

タネトがグッドフォーカス賞に選ばれて喜ぶ奥津代表=雲仙市千々石町の同店

 公益財団法人日本デザイン振興会(東京)が主催する本年度のグッドデザイン賞で、トップ32となる特別賞「グッドフォーカス賞(地域社会デザイン)」に、長崎県雲仙市の「オーガニックベース」(奥津爾代表)が運営する無農薬野菜の直売所「オーガニック直売所タネト」が選ばれた。同賞は本県では初めて。
 奥津代表は東京で妻の典子さんと共に素材を生かす料理教室を開いていたが、10年前に同市の農家、岩崎政利さんの野菜作りに魅了され移住。その後、東京から取り寄せた無農薬野菜に本県産があることに気付き、2019年、同店を同市千々石町に開店した。
 岩崎さんが作る在来種の種採り野菜など、半径20キロ以内で生産され農薬・化学肥料不使用の野菜を常時30種類以上取り扱っている。コンセプトは生産者や消費者、料理人らが交流する「地域の井戸端」。「来店者に最もいい野菜を」という信念のもと、通販はしていない。
 審査員は、都心に流通して地元では買えなかった無農薬野菜を地元と結び付けた点について「地域で革命を起こし、地域を守る力となっている」と高く評価した。新聞紙を容器に使うなど脱プラスチックを進めており、地域社会の持続的発展や経済活性化に寄与するデザインを対象とする同賞のポイントになった。
 奥津代表は「出荷してくれる生産者や、買ってくれる人々に感謝したい。雲仙や日本の食文化は世界的な誇り。地域を深掘りするタネトのような店が全国に増えてほしい」と喜んだ。
 グッドデザイン賞は全国から5447件応募があり、1548件が受賞。本県ではこのほか、五島つばき蒸溜(じょうりゅう)所(五島市)、双日五島開発(同)、させぼガレージ劇場(佐世保市)の計4企業が選ばれた。雲仙市関連では小浜町の雲仙宮崎旅館を設計した彦根建築設計事務所(東京)など2社1個人も受賞した。

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