蘭文の書など初公開30点 「長崎書画展」始まる 市歴史民俗資料館で12月3日まで

長崎貿易にちなんだ初公開の書画が並んだ会場=長崎市歴史民俗資料館

 長崎市平野町の市歴史民俗資料館で12日、江戸時代の海外貿易の歴史にちなんだ書画を展示する特別企画「長崎書画展」が始まった。江戸後期のオランダ通詞(通訳)が古代ローマの格言を書いた蘭文(らんぶん)の書など、県内の個人蔵作品でほとんどが初公開となる約30点が並んでいる。
 江戸期の長崎は鎖国下でのオランダ、中国との貿易窓口として繁栄。海外との交流により、中国の影響を受けた日本画の一派「長崎南画」など独自の芸術文化も形成された。同展では当時の長崎奉行や貿易に携わった通詞、唐人、オランダ商館員をはじめ、画人や僧侶ら文化人の手になる書画を中心に展示。

吉雄権之助筆の蘭文(長崎市歴史民俗資料館提供)

 蘭文の書は江戸後期の蘭方(らんぽう)医(オランダ医学派の医師)吉雄耕牛の子で、出島オランダ商館医シーボルトの通訳を務めた吉雄権之助(1785~1831年)の筆。古代ローマの学者の言葉で当時蘭方医に流布していた「病気は雄弁では治らない、薬で治る」という格言と署名がオランダ語で記されている。
 このほか、江戸後期の南画家木下逸雲が、西洋式砲術の祖として知られる長崎町年寄(地役人)高島秋帆を描いた肖像画や、同時期の長崎港図(作者不詳)など。江戸期を起源とする長崎くんちや精霊流しを題材にした、大正から昭和にかけての書画などもある。
 同館の永松実学芸員は「普段はなかなか見ることができない書画を集めた。資料を通して『貿易都市長崎』の躍動を感じてもらえれば」と話している。
 同展は12月3日まで、月曜休館。入館無料。

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