次世代“SUV”車両お披露目の週末は王者組ルノーが制覇/TC2000第10戦ブエノスアイレス200km

 隣国ブラジルを代表する最高峰“ティントップ”のSCBストックカー・ブラジル“プロシリーズ”を迎え、併催イベントとしてTC2000(旧スーパーTC2000)カレンダーを代表する祭典『ブエノスアイレス200km』がシーズン第10戦として開催された。

 ゲストドライバー主体の予選スプリントこそ、特別参加枠のリカルド・マウリシオ(シボレーYPFクルーズ)が地元シリーズにちなんだユーロファーマRCカラーの90号車で優勝を飾ったが、本戦たる日曜ファイナルでは最年長王者リオネル・ペーニャ(アントニーノ・ガルシア組/ルノー・フルーエンスGT)がさすがのドライブで勝利し、王者が同イベント4連覇を達成する結果となった。

 さらに同シリーズはレースウイーク土曜のパドックにて、兼ねてより「次世代ツーリングカー規定」として導入を予告してきた“SUVベース”の新規定車両もお披露目し、現地で販売される小型クーペSUV『VolksWagen Nivus SUV(フォルクスワーゲン・ニーヴァス)』をベースとした“プロトタイプ001”を発表している。

 アルゼンチンを代表するFFツーリングカー選手権として、10月6~8日の週末に今季唯一の国際イベントとなる『グランプレミオYPFインフィニア』の第17回大会を開催したTC2000は、ノルベルト・フォンタナとともに2009年大会を制覇したSCB“3冠”のマウリシオに、シリーズ“2冠”のネストール・ジロラミがジョイントして話題を集めた。

 一方、トヨタ陣営のTOYOTA GAZOO Racingアルゼンティーナ(TGRA)は、現エースであるジュリアン・サンテロ(トヨタ・カローラTC2000)の68号車ペアに、かつてTGRAと覇権をともにした“5冠”王者マティアス・ロッシを継続起用し、もう1台の29号車をドライブする新鋭ファクンド・アルドリゲッティには、こちらもSCBレギュラーのネルソン・ピケJr.が招聘されるなど、全9チーム19組がエントリーした。

 いつもどおりのFPに加え、ゲスト主体のトレーニングセッションも追加された週末は、日曜ファイナルに向けた予選こそチャンピオンの貫禄を示したアクシオン・エナジー・スポーツTC2000のペーニャが今季5度目のポールポジションを獲得。予選2番手にも僚友イグナシオ・モンテネグロ(ルノー・フルーエンスGT)が続くなど、このセッションはルノーがワン・ツーを占拠した。

 しかし決勝フロントロウの牙城を突き崩すべく、ゲストドライバーによる土曜予選スプリントで奮起したのがイエローのシボレーに乗るマウリシオで、同じくブラジルからゲスト参戦するホンダ陣営YPFホンダRVレーシングのシビックTC2000をドライブしたSCB5冠の“帝王”カカ・ブエノに対し、最後は0秒943の差を付けアクシデントによるセーフティカー(SC)出動も味方してのトップチェッカーを受けた。

隣国ブラジルを代表する最高峰“ティントップ”シリーズのSCBストックカー・ブラジル“プロシリーズ”を迎え、さまざまな交流イベントが催された
地元シリーズにちなんだユーロファーマRCカラーの90号車をドライブしたリカルド・マウリシオ(シボレーYPFクルーズ)
この週末はシリーズ“2冠”のネストール・ジロラミとペアを組むマウリシオが、まずは予選スプリントを制した
現地で販売される小型クーペSUV『VW Nivus SUV(フォルクスワーゲン・ニーヴァス)』をベースとした“プロトタイプ001”を発表

■興奮も冷めやらぬパドックでは次世代TC2000車両がラウンチ

「またここで勝利できてうれしいよ。何よりもブエノスアイレス200kmという重要なレースのために、こうした短期間で僕らのクルマをコースに投入してくれたYPFエライオン・オーロ・プロ・レーシングのチームに感謝したいと思う」と、この勝利で日曜ファイナルのフロントロウも手に入れたマウリシオ。

「このスプリントレースはポールからスタートしてなんとか勝利することができ、明日のレースに向けて一歩前進した。難しいだろうが最善を尽くすよ」

 その興奮も冷めやらぬパドックでは、大勢の関係者や現地メディアが見守るなか、シリーズを運営するタンゴ・モータースポーツ代表のアレハンドロ・レヴィと、新規定モデルの技術的牽引役を務めた元メルセデスの空力責任者グスタボ・エストラーダのリードで、次世代TC2000車両のラウンチが行われた。

「ようやく新世代の斬新なクルマを披露できる日を迎えた。まさに我々の多くが自宅のガレージに置いているクルマ、それこそがSUVだ。歴史的に公道を走っているのと同じクルマをサーキットで走らせるのが定めであり、現代TC2000のDNAでもあるんだ」と挨拶したレヴィ代表。

「これはアルゼンチンのモータースポーツにとって非常に重要な転換であり、同時に品質の飛躍により『非常に先進的なスタイル』を示すことになるだろう」

 公開された“プロトタイプ001”の車両開発責任者でもあるエストラーダ氏も、次のように期待を述べた。

「このプロジェクトを立ち上げ、この日を迎えることを夢見ていた大勢の人々がいる。このSUVによって我々は未来のツーリングカーと、未来のTC2000を発見することになるだろうね」

 明けた日曜現地午後1時15分より、60周または最長90分でスタートした決勝は、ポール発進を決めたペーニャ/ガルシア組の独壇場となり、シグナルオフより背後でスタートドライバーを担当したマウリシオとブエノを抑えることに成功。20周目にドライバー交代のウインドウが開くと、真っ先にガルシアがピットへ向かいペーニャにスイッチしていく。

 ここから“プッシュ・トゥ・パス”の管理を含め、勝手知ったるトップランを維持したチャンピオンが、僚友のファクンド・マルケス/ダミアン・フィネンチ組(ルノー・フルーエンスGT)と、予選10番手から3位まで躍進したアルドリゲッティ/ピケJr.組(トヨタ・カローラTC2000)の29号車を従え、チームにとっては3年連続(2021、2022、2023年)、ペーニャ自身は4年連続の大会制覇を果たした。

 これでペーニャが選手権上のリードも拡大し、残り2戦の大詰めを迎えたTC2000だが、続く第11戦は11月3~5日の週末に同国サンフアンの州都に位置するアウトドローモ・エル・ゾンダで争われる。

今後、シボレー、ルノー、ホンダ、そしてトヨタの現地販売車種の中から、続々と“SUVツーリングカー”が登場する予定だ
10番グリッド発進から、ネルソン・ピケJr.にスイッチし、最終的に3位表彰台獲得のTGRAカローラの29号車
本戦たる日曜ファイナルでは最年長王者リオネル・ペーニャ(アントニーノ・ガルシア組/ルノー・フルーエンスGT)がさすがのドライブで優勝を飾り、王者が同イベント4連覇を達成した
続く第11戦は11月3~5日の週末に同国サンフアンの州都に位置するアウトドローモ・エル・ゾンダで争われる

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