秋の味覚狩りで間違えると嘔吐、錯乱も……すぐそこにある「猛毒キノコ」危機

(写真:小野敏明/アフロ)

猛暑が過ぎ、やっと過ごしやすい季節が始まると同時にシーズンインする秋の味覚狩り。

梨狩り、ぶどう狩り、栗拾い、さつまいも掘りなど、秋ならではの旬な野菜や果物を楽しめると、どの世代にも人気のイベントだ。

なかでも、「キノコ狩り」が近年大人気。しいたけや松茸など、農園が管理している場所での狩りが多いが、山歩きをしながら野山に自生するキノコを摘んで、持ち帰る人も多数いる。

しかし、キノコ人気が高まる一方で、毎年急増しているのが「毒キノコ」を食べて食中毒になる事故だ。大半はキノコが採れる地元の人やハイキングで山を訪れた人が持ち帰ったケースだが、数件は、身近な生活圏内で発生しているという。

東京都は、先月18日に新宿区在住の家族4人が埼玉県内の公園でキノコを採取し、夕食で炒め物にして食べた後、錯乱や意識もうろう、幻覚などの食中毒症状を訴え、救急搬送された、と発表した。うち2人は入院したが、その後全員回復したという。食べたキノコは、毒キノコの「テングタケ」だった。

都民の事故は、2011年以来12年ぶり。

キノコの素人判断は非常に危険で、報告されているだけでも2012年から2021年までの10年間で約820人が毒キノコにより体調不良となり、食中毒事件は302件、そのうち3人が亡くなっている(厚生労働省資料より)。

また、キノコによる食中毒の9割は、9、10月のキノコ狩りのシーズンに発生していることから、これから駆け込みでキノコ狩りを予定している人は、細心の注意を払いたいところ。

■派手なキノコが毒と思ったら大間違い。よく知っているしめじやなめたけに似た「地味な色、形、サイズのキノコ」が猛毒注意!

今回、中毒症状を引き起こした「テングタケ」は、傘が灰褐色やオリーブ褐色で、白色のいぼが表面に散在し、柄の表面は小鱗片で、基部にはつぼの名残が襟巻き状に白く残る。
夏から秋に発生し、広葉樹林の地上に発生する。食後30分ほどで嘔吐、下痢,腹痛など胃腸消化器の中毒症状が現れ、そのほかに,神経系の中毒症状,縮瞳,発汗,めまい,痙攣などで,呼吸困難になる場合もあるという。多くは1日程度で回復するが,なかには死亡例もある、怖い毒キノコの代表だ(以下すべて厚生労働省「自然毒のリスクプロファイル」参照)。

では、ほかにどんなキノコに注意が必要だろうか。

上記と同じく2012年から2021年にかけて、毒キノコの種類別食中毒患者数が最も多いのが、食用でおなじみのシイタケやヒラタケ、ムキタケと似ている「ツキヨタケ」。このキノコは、傘は初め黄褐色で、成熟すると紫褐色から暗紫褐色になり、半円形をしている場合が多い。柄は、太く短い。特に秋に発生し、ブナやイタヤカエデなどに重なり合って発生している。食後30分から1時間程度で嘔吐、下痢、腹痛など消化器系の中毒症状が現れ、幻覚やけいれんを伴う場合もあるが、翌日から10日ほどで回復する。

次いで多いのが、ホンシメジ、ハタケシメジなどと似ている「クサウラベニタケ」。このキノコは、めじんなかせ(岩手,青森県),にたり(埼玉県,前橋市,大分),あぶらいっぽん(前橋市),ささしめじ(金沢市),にせしめじ(秋田,青森地方),うすすみ,さくらっこ,どくよもだけ,どくしめじ(秋田県),いっぽんしめじ(岩手,新潟,富山,長野県),あしぼそしめじ(埼玉)など、全国で異名を持つことから、日本各地で自生していることがわかる。傘は灰色や黄土色、茶色の場合が多く、乾燥時は絹のような光沢があり,湿潤時は濡れたような色,ムラがあり,粘性がある。柄にも絹のような光沢があり、比較的細い。夏から秋に発生し、広葉樹の地上に発生する。食べると、嘔吐,下痢,腹痛など、胃腸の消化器系中毒を起こし、唾液の分泌、瞳孔の収縮、また、発汗などムスカリン中毒の症状も現れる。

厚生労働省は「食用と確実に判断できないキノコは、絶対採らない、食べない、売らない、人にあげないを徹底してほしい」と呼びかけている。キノコ狩りに豊富な経験を持つ人でも、毒キノコで食中毒を起こす例があとを絶たない。いつも食べているキノコと同じように見えるからOK、虫やリスなどの動物が食べた跡があるから大丈夫などと、自分の判断だけでキノコを採取したり食べたりすることは、絶対に避けよう。

© 株式会社光文社