クマか、富山で女性死亡 自宅敷地内、頭と顎に深い傷

クマに襲われて亡くなったとみられる女性宅周辺を捜索する猟友会員と警察官=富山市江本

  ●江本、79歳 近くに足跡、発見至らず

 17日午後9時40分ごろ、富山市江本の江●(「山」のしたに「奇」)彌憲(えざきみのり)さん方の敷地で、妻三千子さん(79)の遺体が見つかった。富山南署によると、頭と顎に深い切り傷があり、死因は首や胸の骨折に伴う出血性ショックで、クマに襲われたとみられる。現場周辺では9日にも人身被害が発生し、厳戒態勢が敷かれているが、クマの発見に至っておらず、住民の不安が高まっている。富山県は18日、今年3度目となるツキノワグマ出没警報を県内全域に発令した。

 署によると、17日午後8時55分ごろ、江嵜さんから「夕方から妻の姿が見当たらない」と通報があった。駆け付けた署員が捜索し、屋外の敷地で血を流してうつぶせに倒れている高齢女性を発見。顔の損傷が激しく、身元の特定に時間を要した。

 女性はピンク色の長袖シャツとエプロン、紺色のズボンを着用していた。江嵜さんは2人暮らしで、最後に三千子さんを見掛けたのは午後6時ごろだった。18日の司法解剖の結果、死亡推定時刻は午後5~8時とみられる。

 富山市によると、敷地ではクマとみられる足跡が見つかっている。このほか、17日午後5時半ごろには現場付近の別の住宅でもクマが目撃されていた。

 現場は富山駅から南に約8キロ離れた田園地帯。周辺には住宅が点在している。近くには小中学校や児童養護施設もある。18日は富山南署、地元猟友会、富山市などが現場周辺をパトロールした。

 現場から約2キロ離れた熊野小のグラウンドに隣接する畑ではクマの足跡が確認された。17日深夜にはクマと車が接触する事故も発生しており、クマは走り去ったという。

 富山県によると、県内でクマによる人身被害で死者が出たのは2006年10月が最後。今年に入ってからの人身被害は今回で4件目。9日には今回の現場から約2.5キロ離れた富山市栗山で女性が自宅敷地でクマに襲われて重傷を負った。

 県は9日と17日の人身被害2件について、クマが熊野川を下って移動してきたとの見方を強めた。同一個体の可能性も含め、現地に専門家を派遣して調べている。19日に緊急対策会議を開く。

  ●ドローン、赤外線で捜索 県警

 富山県警は18日、体温を感知できる赤外線カメラを搭載したドローン2台を使い、クマを捜索した。午後4時半から約1時間、現場周辺の熊野地区の雑木林や熊野川沿いのやぶを中心に捜索したが、クマは見つからなかった。

熊野小に隣接する畑で見つかったクマの足跡=富山市宮保
ドローンを使ってクマを捜索する警察官=富山市森田

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