季節の変わり目の不調を乗り越える、1日1さじ「酢大豆」習慣

気温、湿度が下がり、食欲が増す季節になったが、この時季は食べすぎによって体重が増加したり、胃腸の状態にも変化が起こりがちになる。

「女性の場合、更年期を迎えるあたりから基礎代謝が低下して太りやすくなるのに加え、筋肉量が急速に減少してきます。この傾向はメタボリックシンドロームや血管疾患を引き起こす原因となるなど、健康寿命に深刻な影響をおよぼしかねないので注意が必要です」

そう話すのは、イシハラクリニック副院長の石原新菜先生だ。

筋肉は基礎体力や免疫力のほか、皮膚の張りや血行にも関わりが深く、いわば私たちの“若さのバロメーター”でもあるという。そのため、できるだけ維持することを心がけたい。

筋肉をつくるために不可欠なのが良質なタンパク質だが、取り方にも注意が必要。肉や魚などの動物性タンパク質に偏ってしまうと、腸内環境が乱れ、便秘や腸炎などのトラブルに直結することもあるためだ。

「たとえ三食しっかり食べていたとしても、栄養のバランスが悪ければ腸には負担をかけてしまうことに。ただでさえ現代人はストレスを抱えていることが多く、これも腸にダメージを与える原因になってしまいます」(石原先生、以下同)

こうした背景から、読者世代に積極的に取ってほしいと石原先生がおすすめするのが、酢と大豆を一緒に取る「酢大豆」だ。

大豆の植物性タンパク質は、筋肉や骨を強化することでフレイルや転倒のリスクを抑えるだけでなく、健康的な髪や張りのある美肌づくりにも役立つなど、アンチエイジングの面においても効果を発揮する。

「大豆は血管の健康維持に役立つ不飽和脂肪酸も含んでおり、これが動脈硬化予防の役目をします」

動脈硬化は心筋梗塞や脳梗塞を引き起こす。日本人の死因の第2位が心疾患、第4位が脳血管疾患であることを考えても、予防・対策が必要だ。

また、大豆は食物繊維も豊富であるため、腸内環境を整え、便秘を改善したり、免疫バランスを整えてくれる。大豆イソフラボンには女性ホルモンのような作用があるため、更年期症状の改善も期待できる。

「このほか、血圧を調整する働きのあるカリウム、糖質をエネルギーに変換して燃焼させる働きがあるビタミンB₁、血中の悪玉コレステロールを抑制するリノール酸やリノレン酸なども含まれます」

これら大豆の栄養効果をさらに引き立てるのが酢だという。

「お酢は発酵食品であり、血糖コントロール、高血圧改善など、生活習慣病予防の効果があります」

ほかにも、酢は体内の乳酸の分解を促進し、食べたものを効率よくエネルギーに変換する働きもあるため、疲労回復や免疫力アップにも効果がある。栄養効果の優れた大豆と酢を組み合わせたものが酢大豆だ。このスーパーフードによって得られるメリットを石原先生は次のように話す。

「酢大豆は、血管の健康を保つ大豆と、血液をサラサラにするお酢の組み合わせ。相乗効果によって血管年齢を若く保つことにつながります。酢大豆を毎日食べるようにしたら血圧や血糖値が安定してきた、といった話は私も患者さんからよく聞きます」

大豆のカルシウム吸収率が高まることで骨の強化になる、善玉菌を増やして腸内環境を整えてくれることから、便秘改善、ダイエット効果も得られるそうだ。

これほど健康面でのメリットが大きいとあれば、ぜひ酢大豆を習慣にしたい。作り方がとても簡単なところもうれしいポイント。市販の蒸し大豆や大豆の水煮缶(水気を切る)を密封できる保存容器に入れ、大豆がちょうど浸るところまで酢を加える。これを冷蔵庫でひと晩寝かせるだけ。

「保存食としても使いやすく、冷蔵庫に入れておけば2週間ほどは持ちます」

酢大豆は毎日大さじ3杯を目安に食べよう。

「朝、昼、晩に大さじ1杯分を食べるのが理想です。そのままでは物足りないという場合は、保存容器ににんにくや玉ねぎのスライス、昆布、おろししょうがなどを加えてアレンジを楽しむのもよいでしょう」

栄養バランスの取れた食事に合わせて、毎日食べ続けることが大切だ。手軽に習慣化できて、高い健康効果が望める酢大豆。食欲の秋から、ぜひ毎日の食卓に加えよう。

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