社説:参院1票の格差 抜本的改革は不可避だ

 「1票の格差」が最大3.03倍だった昨年7月の参院選は投票価値の平等を求める憲法に違反するとして、弁護士グループが選挙無効を求めた全国訴訟で、最高裁は合憲とする判断を示した。

 格差是正に向けて2016年選挙以降、人口の少ない隣接県を一つの選挙区にする「合区」を導入した効果を評価する過去2回の判断を踏襲し、「違憲の問題が生じる程度の著しい不平等状態だったとはいえない」と結論づけた。

 ただお墨付きを与えたのではない。一層の是正を「喫緊の課題」と求め、都道府県単位にこだわらない選挙制度見直しの必要性も指摘している。

 国会は真摯(しんし)に受け止め、小手先で取り繕うのではなく、自ら約束してきた抜本的な改革を速やかに進めねばならない。

 訴訟は全国14高裁・高裁支部に16件起こされ、仙台高裁の「違憲」1件のほか「違憲状態」が8件、「合憲」が7件と割れていた。

 判断の焦点は、16年選挙から「鳥取・島根」「徳島・高知」で導入された合区への評価といえるだろう。

 最高裁は、それまで5倍前後だった格差が3倍程度で推移する一方、導入4県で投票率の低下などが見られる問題点にも留意した。「一層の選挙区見直しには慎重に検討すべき課題があり、広く理解を得て成案を得るのに一定の時間が必要だ」とし、合意形成の重要性を指摘した。

 裁判官15人のうち、3人が違憲や違憲状態とし、制度改革が停滞している国会の不作為を指弾したのは見逃せない。

 違憲・無効とした1人は、最大格差が3倍を超える宮城、東京、神奈川の3選挙区の有権者数は全体の20%を上回っているとし、「不平等は憲法上許容される範囲を超える」と断じている。

 選挙制度改革を巡っては、地方票を重んじる自民党が、次期25年選挙で合区解消を掲げるが、代わる格差防止策が課題だ。公明党や日本維新の会は全国をブロック分けした大選挙区を提案しており、参院改革協議会の各党の議論は平行線にある。

 より細かな小選挙区を柱とする衆院との役割分担を考慮する必要があろう。「良識の府」を自任するなら、多様な意見をすくいとる視点が重要ではないか。

 党利党略でなく、投票価値の平等と民意の反映の両立を目指して論点を詰め、合意点を見いだすべきだ。

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