「奇跡のような景観を守る」 京都・南丹の北村かやぶきの里保存会の会長が決意

「唯一無二の奇跡のような景観を次世代に残したい」と語る中野さん(南丹市美山町北・かやぶきの里)

 国の重要伝統的建造物群保存地区(重伝建)で、多くの訪日客らが足を運ぶ「かやぶきの里」(京都府南丹市美山町北)。穏やかな暮らしぶりを含め、日本の原風景として国内外で知名度が高まる。一方で住民の高齢化や空き家の将来的な増加といった懸念もある。中野善文さん(64)は7月に北村かやぶきの里保存会の会長に就任し、「唯一無二の奇跡のような景観を守るため、新しい北村をつくりたい」と意気込む。

 生まれも育ちもかやぶきの里。年間25万人前後が訪れる現在と異なり、「里を見知らぬ人が歩いていると、驚くくらいだった」と幼い頃を思い起こす。

 1970年代には、かやぶき屋根を鉄板で覆う家が増えた。「かやぶきは古くさい印象だった」という。

 しかし、「美山が一番」が口癖の父金平さん(故人)は、かやぶき屋根を守り続けた。金平さんらの尽力で93年に重伝建に選定され、価値観は徐々に変化。近年は鉄板を外し、再びかやぶき屋根に戻す家もある。

 ひな壇のようにかやぶき家屋が建ち並ぶ光景を一目見ようとする老若男女や訪日客も増えた。「昔は父に対し、『時代に合わせたら』という気持ちもあった。今からすると、先見の明があったと思う。よくぞ残してくれた」と話す。

 丹波地域で長く教員を務め、福知山市で暮らしていた。かやぶきの里に帰る度、「よいところやなと年々思うようになった」といい、数年前に帰郷。ピザ屋を構え、観光客に親しまれている。

 重伝建選定から30年の節目に重責を担う。観光と暮らしを両立させた持続可能な観光スタイルの確立や、空き家の維持管理、かやぶき家屋を守る後継者の育成、景観や自然への影響が予想される北陸新幹線新大阪延伸計画への対応など、難題は多い。「次世代にかやぶきの里を残すため、やるべきことはたくさんある。その分、楽しいことも多い」と前を向く。

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