この時期が一番おいしいのに…シラス“史上初”2年連続不漁 回復の兆しは見えず このままでは高級品に=静岡

1年でこの時期が最もおいしいといわれているのがシラスです。ところが、静岡県内のシラス漁が2年連続で不漁となっています。回復の兆しは見えず、漁業関係者からは悲鳴が上がっています。

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<どんぶり工房店員>
「おまたせしました!生しらすとゆでしらすの二色丼です」

静岡市駿河区の大浜海岸の近くにある「どんぶり工房」は、その日とれた生のシラスや、ゆでシラスが食べられる人気の店です。“安くてうまい”を売りに、10年前から営業していますが、最近はシラスの値段に頭を抱える日々です。

<どんぶり工房 望月圭佑店長>
「高いですね、今年は。仕入れ価格も1.5倍から2倍くらい。あんまり高いとね、いくらシラスがおいしいといっても、お客さんの足も遠のいちゃうような気がするので(値上げせず)このまま頑張ろうかなと思っています」

<竹川知佳記者>
「シラスの水揚げで有名な吉田漁港です。午前8時前、次々と船が戻ってきています」

静岡県内有数のシラスの漁獲高を誇る吉田町の吉田漁港には、10月18日朝、漁を終えた船からシラスの入るかごが降ろされました。

<漁師>
Q.シラスの獲れ具合は?
「少ないね。いつもの半分あるかな。それくらいじゃない?」

例年、多い時には1隻当たり約30箱のシラスがとれていましたが、18日は、ほとんどの船が3、4箱にとどまりました。

静岡県内のシラスの水揚げ量の推移をみると、8年前の2015年には8,500トンほどありましたが、以後は右肩下がり。特に、2022年以降は急激に減り、2023年は、まだ漁期を3か月残してはいるものの、2,134トンと回復の兆しは見えていません。1975年の統計開始以降、2年連続の不漁は初めてということです。

不漁に伴い、価格は高騰しています。

<仲卸業者>
「以前と比べれば、価格が倍近いかもしれないですね。何とかかんとか、やりくりして売っていくしかないですね」

2023年8月時点での県内の主要な市場での平均単価は、1キロあたり1,464円。過去5年間の平均単価1キロあたり829円に比べると1.8倍と大きく跳ね上がっています。

県の水産・海洋技術研究所によりますと、不漁の原因の1つとして考えられるのが「黒潮の大蛇行」です。通常、黒潮は静岡県沖をまっすぐに流れて北に向かいます。一方、近年の黒潮の流れは大きく曲がっています。これが「黒潮の大蛇行」です。大蛇行が発生したのは2017年8月で、実に6年2か月と気象庁の観測史上、最も長く続いているということです。

2023年の3月下旬から2024年1月中旬までが漁期のシラス漁。2023年シーズンの漁は、あと3か月ほどありますが回復の見込みは薄いといいます。

<南駿河湾漁業協同組合 園田信晴吉田支所長>
「正直いって9月10月で量がとれないと、11月、12月は風が吹いてきて、漁に出られない日が増えるので、なかなか今とれないと非常に厳しいかなという状態」

県内の食卓では、当たり前の存在だったシラス。いまの状況が続けば、“高級品”になってしまう日もそう遠くありません。

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