兵庫県、森林組合連合会への貸付金9億円が回収困難に バイオマス発電行き詰まり、収支が悪化

稼働を停止している「朝来バイオマス発電所」=7月、朝来市生野町真弓

 兵庫県が県森林組合連合会(県森連、神戸市中央区)に貸し付けた9億円が期限までに返済されず、回収困難となっていることが19日までに分かった。県森連は関西電力子会社などと取り組んでいた木質バイオマス発電が行き詰まり、収支が悪化していた。県林務課は「貸し付けは事業計画書などに基づいて判断しており、妥当だったという認識。引き続き債権回収に努める」としている。

 県森連は1941年に設立。森林組合法に基づき、県内17森林組合の経営指導をしているほか、苗木の調達や病害虫の防除、山林の地籍調査などの事業を担っている。現在の会長は谷公一衆院議員(兵庫5区)、副会長は石川憲幸県議。

 県は70年から県森連への貸し付けを開始。2019年度は約7億円と前年度から約3億円増え、その後も20年度約8億円、21年度約8億5千万円と増えていた。県森連は21年度までは年度末に返済していたが、22年度の9億円は今も返されていない。

 経営悪化の要因となったバイオマス発電は16年に運転を開始。県森連が県産木材をチップに加工し、関電子会社が運営する「朝来バイオマス発電所」(朝来市)に供給していた。しかし、新型コロナウイルス禍に伴い木材価格が高騰する「ウッドショック」で木材調達が困難になり、赤字が拡大。県森連は昨年11月に事業撤退を決め、同発電所も翌月に稼働を停止した。

 県森連は関電側から損害賠償を請求される可能性を想定し、昨年11月、大阪地裁に特定調停を申し立て、現在も調整が続く。

 県は今後、第三者で構成する公社等運営評価委員会で検証する方針。斎藤元彦知事は19日の会見で「バイオマス発電事業の見通しが十分だったかどうか分析、検証し県民に説明する」と説明した。

 一方、県がこれまで県森連に委託していた事業は、新団体「ひょうご森林林業協同組合連合会」(神戸市兵庫区)が継承。この団体の会長と副会長も谷氏と石川氏がそれぞれ務めており、斎藤知事は18日の県会決算特別委員会で「県民の理解を得られるものではない。代わっていただく方向で申し入れていく」と述べている。(三宅晃貴)

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