クマ被害増で巡回支援拡充 県が緊急会議「密度上げて」

  ●補助金「もう限度額」

 富山県はクマによる被害防止のための取り組みを支援する市町村への補助金を拡充する。19日、富山市の県農協会館で開かれたツキノワグマ緊急対策会議で、自治体の担当者から補助金の引き上げを求める声が出され、廣島伸一県生活環境文化部長は「パトロールの密度を上げる必要がある」と応じた。

 県はクマ出没に伴うパトロール経費などを最大30万円補助している。パトロール経費や捕獲にかかる人件費、出没防止に向けた環境整備費などが対象で予算額は600万円。南砺市の担当者がパトロールのほか、注意喚起の看板やチラシに補助金を活用しており限度額に達する見込みだと説明し、引き上げを求めた。

 緊急対策会議は、17日に富山市内で女性がクマに襲われ死亡したとみられることを受けて開かれた。今年に入ってからの人身被害は4件目で、死者が出るのは2006年10月以来。県は18日に今年3回目となる出没警報を発令したと報告した。

 10月のクマ出没件数は18日時点で118件となっており、9月の33件から急増している。朝夕の外出や農作業を控え、クマに遭遇した際は頭部や顔を守るように呼び掛けた。

 県自然博物園ねいの里の担当者は、河川敷や河岸段丘がクマの移動経路になっていると解説した。現場付近では9日にも民家の敷地内で人身被害が発生しており「周辺地域には誘引物となるカキの実が多く見られた」と指摘した。

 富山市庵谷ではカキの木を伐採した結果、クマやサルなど野生動物が見られなくなったとし「実例を検証し、伐採に向けた条件整備をするべきだ」と強調した。

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