グリルにアルミホイルで発火、エアコン掃除で引火…命を脅かす時短・節約家事

「家事は少しでも短時間で楽に、そして節約したい。その気持ちはわかりますが、そうした工夫が、火災など思わぬ事故を引き起こすことがあります」

そう警鐘を鳴らすのは、独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)の安元隆博さんだ。

たとえば、NITEが把握するガスコンロの製品事故は’18~’22年度に195件だが、半数以上の108件が利用者の不注意などによる。さらに、汚れの放置や間違った掃除の時短術が原因の事故は43件と全体の4分の1近い。

家事アドバイザーの河野真希さんも恐怖を感じることがあるそう。

「安全の観点からは間違った危険な時短・節約家事の情報を、ネットなどでときどき目にします」

危険な家事を見ていこう。

【1】ガスコンロのグリル内にアルミホイルを敷く

グリル掃除は本当に面倒。特に焼き網についた汚れは頑固だ。

「鶏皮など脂の多い食材の調理中にアルミホイルを敷くのはNGです。アルミホイルに脂がたまって発火したり、飛び散った脂に引火したり。火事になった事例もあります」(安元さん)

【2】コンロのグリル排気口を油跳ね防止のためアルミホイルで覆う

グリルの使用中に排気口をふさぐと、グリル内が高温になり危険。

「グリル使用時の排気口は思った以上に高温です。排気口をふさぐだけでなく、近くにふきんやガスボンベなどを置くのも危険です。

また、市販の排気口カバーもありますが、製品ごとに正しい使い方は異なります。取扱説明書で確認してください」(安元さん)

【3】電子レンジで、アルミ製のトレイやアルミホイルを加熱する

電子レンジではアルミ製のトレイやアルミホイルなどのほか、耐熱性のないプラスチックやガラスの容器、紙皿などが使えない。

「市販の総菜が電子レンジOKな容器に入っているとは限りません。アルミトレイなどのまま加熱するとスパークしたり、紙皿が燃えることもあるようです」(河野さん)

【4】IHヒーターの汚れ防止マットを敷いたまま調理する

IHヒーターで市販の汚れ防止マットを敷いたまま天ぷらを調理。その場を離れたすきに油が発火し火事に。

「本来ならIHヒーターのセンサーによって制御されるのですが、汚れ防止マットを敷くと、温度検知機能がうまく働かなくなる危険性があります」(安元さん)

汚れ防止マットの素材や品質によって使い方が違うので注意が必要。なにより揚げ物中はその場を離れないという基本を守ろう。

【5】少なすぎる油での揚げ物(+揚げ物中にふたをする)

「少量の油でムダのない揚げ物が人気ですが、少なすぎる油はすぐに高温になるため危険です。また、天ぷら油の温度を早く上げたいのか、天ぷら鍋にふたをする人がいるようですが、これは絶対にやめてください」(安元さん)

高温に熱された油は、ふたを開け酸素が供給された途端“爆発”の勢いで火が上がる。調理者の命さえ奪われかねないと心して。

【6】エアコンを自分でスプレー洗浄する

夏に酷使したエアコンを掃除したい。でも業者に依頼するのはもったいないと、市販の洗浄スプレーなどで素人が内部を洗浄すると、エアコンの配線端子に洗浄液が付着して異常に発熱するトラッキング現象が起こることも。

「エアコンの内部洗浄はプロに任せるのが安全です」(安元さん)

【7】電子レンジで液体を過剰に温める

1人分のコーヒーなどを“レンジでチン”と作る人が多いのでは。

「電子レンジでの液体加熱は温めすぎると危険です」(河野さん)

レンジ調理では沸点を過ぎても沸騰しないことがあるそう。でも、レンジから取り出す、砂糖を入れるなどの刺激が加わった直後に一気に沸騰。爆発のように液体が噴き上がる現象を「突沸」という。

「沸騰した液体が手や顔などにかかってやけどの恐れも。加熱時間は短めに設定し、途中でかき混ぜるなどして、様子を見ながら加熱してください」(河野さん)

【8】暖房を消し、もこもこしたセーターなどを着て火を扱う

「寒くても、自分1人のために暖房をつけるのはもったいない。もこもこした服を着ていれば大丈夫」

そう考える主婦は多いだろう。けなげな節約志向だが、火を扱うときは注意が必要だ。 「生地の表面が毛羽立ったものやゆったりサイズの衣類などは引火に注意が必要です」(河野さん)

危険な家事から身を守るための注意点を安元さんに聞いた。

〈1〉取扱説明書を読もう

便利グッズなどを使う場合、家電製品とグッズ両方の取扱説明書を読んで。メーカーが推奨しない使い方は避けよう。

〈2〉調理器具の汚れをためない

汚れやかすなどが発火のもとだ。

河野さんは「汚れをためないこまめな掃除が大切」と言う。

「マイクロファイバーのふきんなら洗剤なしでOK。使い捨てシートなら拭いた後は捨てるだけ。便利グッズで、掃除のハードルを下げるのも一案です」(河野さん)

〈3〉製品の機能を知って

タイマー設定や温度管理など、新しい安全機能を上手に使おう。

〈4〉調理中はその場を離れない

時短や節約のために危険を招くなんて本末転倒だ。安全第一で、賢く家事をこなそう。

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