【MLB メッツ千賀滉大 シーズン総括】エースとして活躍もチームは不振でまさかの売り手に 来季こそポストシーズンでの登板に期待

■WSを狙えるチームに加入したはずだったが……

千賀滉大は昨年12月、5年7500万ドル(約112億円)という大型契約でメッツに入団し、念願のメジャーリーガーとしての生活をスタートさせた。日本の誇る本格派右腕が一体どんな投球を見せてくれるのか――日米の大きな期待を背負った千賀がメジャーデビューを果たしたのは4月2日。敵地でのマーリンズ戦に先発登板し、6回途中1失点8奪三振で初勝利を挙げた。

そこから一度も故障離脱することなくシーズンを全うした千賀は、12勝7敗、防御率2.98、166回1/3、202奪三振、WHIP1.22という好成績でメジャー1年目を終えた。規定投球回に到達し防御率2点台かつ200奪三振以上を記録した1年目の日本人投手は、1995年の野茂英雄氏以来の2人目。防御率はサイ・ヤング賞が確実視されているブレイク・スネルに次ぐリーグ2位で、その投球内容はエース級だったと言ってもいいだろう。

ただ、本来ならメッツには実績あるエースが他に2人いるはずだった。殿堂入りも間違いないと言われるジャスティン・バーランダーとマックス・シャーザーの2大エースだ。MLBで最も資金力のあるスティーブ・コーエンをオーナーとするメッツは、MLBでダントツの年俸総額3億4000万ドル以上というチームを作り上げた。その最たるものがMLB最高年俸のバーランダーとシャーザーのデュオ結成だったが、チームは予想外の不振に陥ったためシーズン途中にこの2人をトレードで放出。ワールドシリーズを狙えるチームに入ったつもりだった千賀にとっては、大きな誤算だっただろう。結局、メッツは75勝87敗の地区4位に終わった。
 

■故障なくシーズンを過ごし、後半戦に成績が向上

写真:現地時間9月27日のマーリンズ戦で200奪三振を達成 ©Getty Images

今季に限れば千賀はバーランダーやシャーザー以上と言える投球を見せていたのだが、とくに素晴らしかった点が二つある。一つは故障離脱しなかったこと。千賀の契約は実績にしてはやや安いものと評価されていたが、これは千賀に故障リスクの懸念があったためだ。1年目を故障者リスト入りすることなく終えたことで、球団からの信頼度も高まったのではないだろうか。

もう一つは、後半戦に成績を向上させたことだ。野茂やダルビッシュ有ら日本人先発投手の多くが1年目のシーズン後半に成績を落とした。しかし今季の千賀は前半戦の防御率3.31に対し、後半戦は2.58とむしろ向上している。終盤には8試合連続クオリティ・スタートを記録するなど抜群の安定感を誇った。

今季の活躍ぶりは“新人王級”と言っていいものだが、走攻守に素晴らしい活躍を見せたコービン・キャロルの受賞が確実視されている。それでも新人王投票上位には入るであろうし、サイ・ヤング賞投票でも上位に名前が挙がる可能性はある。

千賀は来季に向けて「僕がエースと呼ばれないような補強をしてほしい」と語った。個人としては充実した1年だったが、チームとしては不満の残る2023年シーズンだった。メッツがオフにどんな補強をするかはわからないが、どんな好投手が加入したとしても、来季の千賀に期待されるのは、さらに進化したエースとしての活躍になるだろう。

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