交際相手からの“デートDV” 性暴力に傷つくも学校や警察は「嫌と言えばよかった」【大石が聞く】

(大石邦彦アンカーマン)
「その人とご自身はどういう関係だったんですか?」

(10代の女性)
「もともとは同意の上でお付き合いしていたんですけど、1か月くらい経ってから様子がおかしくなっていって…」

三重県内に住む10代の女性。
交際相手からの暴力、いわゆる“デートDV”の実態を訴えます。

(10代の女性)
「公園とかに遊びに行ったときに、トイレの壁のあたりに連れて行かれて、脱がされて、触られたりして…」

被害を受けたのは、まだ去年のこと。
相手は、当時交際していた高校の同級生の男子生徒。
初めは「優しくて面白い」と思っていましたが、その後、嫌がる彼女に繰り返し性行為を強要するようになったといいます。

(大石アンカーマン)
「『嫌だ。やめてください』というような拒否はしたんでしょうか?」

(10代の女性)
「最初は『嫌だからやめて』っていう感じで言ってたんですけど、日に日に怖い気持ちが増してきて…」

「頻繁に力比べみたいなことをされていて、『お前は力が弱い。俺は力があるんだぞ』と頻繁に言われたりとかもしていたので、何かあったら殺されるんじゃないかとか、そういう恐怖もあって、だんだん『やめて』と言えなくなって、従ってしまった」

「恐怖で動けなくなった」怖さで拒絶できず悪循環

自宅や学校などで繰り返し強要され、高圧的な口調や態度が怖くなり断れなくなったと話します。

(10代の女性)
「別れたいというふうに言ったことがあるんですけど、そうなると夜中とかでも電話をしてきて、『別れるなら死ぬぞ』ということも言われて、もう私が我慢するしかないのかな…と」

男女間のDVには、こんなサイクルがあると考えられています。
加害側がイライラして高圧的になる「緊張期」。
そして暴力や性行為の強要などが起こる「爆発期」。
その後、加害側が謝って優しくなる「解放期(ハネムーン期)」に。

ここで、被害側が相手を信頼したいという気持ちから受け入れてしまい、また緊張・爆発を繰り返す。
この悪循環が続くうちに、被害側も逃げたり強く拒絶したりすることが出来なくなっていくのです。

(10代の女性)
「そこで私が怖くても、やめてって言ったり無理矢理にでも逃げたら良かったのかなって、今になったら思うんですけど。そのときはその行動はできなくて。恐怖で動けなくなったという感覚が近い」

女性は、相手が会話の内容などを仲間内で共有していたことを知って、怖くて学校に行けなくなり両親に打ち明けました。

(女性の母親)
「生きた心地がしないというか…本当にこれが娘の身の上に起こったのかと、最初理解ができなかった」

「嫌って言えたでしょ」 それが言えない精神状態に追い込まれ…

性行為の強要は、DV・性暴力にもあたります。
相手の父親は教師、母親は地元の教育委員でしたが、合意だったはずだと取り合いませんでした。

(女性の母親)
「(相手の両親が)『18歳になっている大人同士がやることに、親が入って引き裂くってどうなんですか』と。付き合ってる者同士、合意のことなのに騒ぎすぎ、じゃないですけど…」

また警察は、「明確に否定していないなら合意したことになる」「仕返しの恐れもある」などとして、被害届を受理してくれませんでした。

相手の男子生徒は、学校に対し、一連の行為を認めたため、卒業まで停学になりましたが、それ以上の責任追及も調査もされておらず、直接の謝罪はしていません。

(女性の母親)
「学校の先生にも警察にも言われましたが、『交際しているんだから嫌なら嫌って言えたでしょ。何で言わなかったの』『付き合っているんだから言えるでしょ』
それが言えない精神状態に追い込まれたことが、この結果を生んでいるんです」

そもそもデートDVとは?専門家に聞く

交際相手からの暴力、デートDV。
20年ほど前、この言葉を作り、今も問題解決に取り組む山口さんは
周りのより積極的な介入が必要だと話します。

(「デートDV」の言葉を作った山口のり子代表)
「力を使って相手を思い通りに動かすのがDV。
それを維持するために加害者はいろんな力を使う。
もう束縛されたり支配されてるので、別れるっていうことも言い出しにくい。言い出したら脅されて、付き合い続けることになってしまうことが多い」

DV問題に詳しい堀江哲史(ほりえ さとし)弁護士は。

(ミッレ・フォーリエ法律事務所 堀江哲史 弁護士)
「例えば、暴力を振るってけがをさせれば暴行罪、傷害罪。
本当はしたくないのに、性的な行為を強要されれば不同意性交罪。
やっている内容を見ると、れっきとした犯罪であるということも十分にある」

国は2005年から、交際相手によるDVの実態も調査していますが、
およそ17%、6人に1人の女性が何らかの暴力を経験していると言う結果が出ています。

しかし交際相手の暴力には、現在のDV防止法は適用されないため、
対応が難しいのが現状です。

「ただ普通に楽しく過ごしたかっただけ」精神的なダメージ大きく

街で聞いてみると。

(街の声 10代女性)
「男の友達と会っちゃだめと徹底されていた。会ってなかった」

(街の声 10代男性)
「(他の男と)連絡取らないでとか、2人でご飯はだめとか(相手に言っていた)」「好きだから、自分のものにしたい」

(街の声 20代女性)
「基本全部(彼氏に)報告。(携帯で)GPSとかも…」

10代から60代まで60人に聞いたところ、「デートDV」を知っていたのは13人。5人に1人でしたが、体験したことがある人も少なくありませんでした。

被害にあった三重の女性を診察した医師は…

(いなべ総合病院 産婦人科 川村真奈美 医師)
「体の方は特に問題はなかったんですが、やはり精神的な打撃の方が大きく、さらに周りの反応、主に学校の対応があまり良くなかったようで、それがやっぱりショックだったのでは」

今は大学に通う女性。
しかしいまだに外出が怖いなど、精神的なダメージは残っています。
高校に対して、「いじめ重大事態」として調査するよう改めて求めましたが、「あくまで生徒間の男女問題」として対応していません。

(大石アンカーマン)
「まさかこんなふうになるなんて思わなかったですよね…」

(10代の女性)
「ただ普通に楽しく過ごしたかっただけで、みんなと同じように笑って過ごしたかっただけだったんですけど…」

2023年10月16日放送 CBCテレビ「チャント!」より

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