富山県上市町で70年、サンドイッチ「すみれ」10月で閉店 優しい味 常連客惜しむ

常連客と笑顔で話をする宍戸さん(右)

 自家製カスタードクリームに優しい甘みの卵焼き-。富山県上市町中心部で70年以上続く老舗サンドイッチ店「すみれ」(新町)が、今月いっぱいで閉店する。店主の宍戸恵美子さん(78)が長年一人で切り盛りしてきたが、体力的に厳しいとのれんを畳むことにした。9月に閉店の案内をしてからは、懐かしの味を惜しむ常連客らが次々と訪れる。宍戸さんは「長い間良くしていただいた」と感謝する。

 店は富山地鉄上市駅から上市高校に向かう道路沿いにあり、多くの高校生や町民に親しまれる。1番人気は自家製カスタードクリームを使ったクリームサンド。注文を受けてから食パンを薄く切り出し、クリームを塗って提供する。隠し味に練乳を使って甘く仕上げた卵焼きなど長年変わらぬ手作りの具材を挟んだサンドイッチも人気だ。

 店の成り立ちには諸説あり、戦後に飲食店を始めたのがきっかけという。宍戸さんが嫁いできた55年前には現在のようなサンドイッチを販売しており、義母が営業していた。後を継いだ夫の弘夫さんが2004年に62歳で亡くなってから一人で店を守ってきた。

 ただ、最近は店を続けることに体力的に限界を感じてきた。閉店は、大勢のお客さんのことを考えると苦渋の決断だったという。

 9月上旬に閉店を知らせる張り紙を出した。客からは「悲しい」などと惜しむ声も多いが、「お疲れさま」「今までありがとう」との声もかけられる。宍戸さんは「大変だったけど、お客さんと世間話をできたりして楽しかった。皆さんにありがとうを伝えたい」と話している。

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