被爆遺構でつくる国史跡「長崎原爆遺跡」 2カ所を追加指定へ 市民の歴史遺す布石に

爆心地そばを流れる下の川=長崎市松山町

 国の文化審議会(佐藤信会長)は20日、長崎原爆の被爆遺構で構成する国指定史跡「長崎原爆遺跡」に、爆心地に隣接する下の川(長崎市松山町)と山王神社境内(同市坂本2丁目)の2カ所を追加指定するよう盛山正仁文部科学相へ答申した。指定時期は未定。
 長崎原爆遺跡は▽爆心地▽旧城山国民学校校舎▽浦上天主堂旧鐘楼▽旧長崎医科大学門柱▽山王神社二の鳥居-の5件で、2016年に国の指定を受けた。
 追加予定の下の川は、被爆者が水を求めた当時と変わらない水の流れが残っており、被害を受けた家屋などのがれきが堆積した地層もある。山王神社境内には被爆樹木や石造物といった遺物が残されている。大クスは同市指定天然記念物。
 国史跡に指定されると保存や活用のための整備に国の補助金などが活用できる一方、保護のため現状変更に制限がかかる。
 同神社の舩本貴之禰宜(ねぎ)(51)は「被爆者が高齢化する中で被爆遺構は、次世代に被爆の実相を伝える貴重なもの。指定を受けいろんな人に広く知ってもらいたい」と話した。
 市被爆継承課の奥野正太郎学芸員は「被爆遺構が文化財として認められ、長崎市民の歴史が『国民が共有すべきもの』になる。国の指定は後世に『これらの史跡は守るべきもの』と伝え遺(のこ)すための布石」と意義を語った。
 市は長崎原爆遺跡の指定拡大を検討しており、「県防空本部跡」(立山1丁目)の追加も目指している。

山王神社境内の大クス=長崎市坂本2丁目

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