東京電力福島第1原発の処理水に含まれる放射性物質トリチウム(三重水素)と化学的な性質が同じ「重水素」を多く含む海水でヒラメを飼育し、体内の重水素濃度を調べた結果、周囲の海水の濃度以上に蓄積しないことを確認したと、環境科学技術研究所(青森県六ケ所村)が発表した。ヒラメの体内に取り込まれたトリチウムも代謝によって排出され、海水中の濃度を超えないことを確認できたとしている。
重水素とトリチウムは、いずれも水素の同位体。トリチウムが弱い放射線を出す一方、重水素は放射線を出さず、実験中に被ばくの心配がない。
研究チームは、自然の海水に約160ppm含まれる重水素を2000ppmまで人工的に高めた海水の中でヒラメを161日間飼育。食用となる筋肉中の重水素濃度は最大約400ppmまで上昇したが、通常の海水に戻すと実験開始から1年で、海水と同じ160ppm程度に下がった。
海水中のトリチウムは魚に取り込まれると一部がタンパク質などの有機物に結合されて「有機結合型トリチウム」になるが、海の魚への蓄積データはこれまでなかった。