「学資保険はもう古い」は本当なのか?つみたてNISAと比較したメリット・デメリット

子どもの教育費は住宅費、老後費用と並んで“人生の3大支出”と呼ばれ、大きな資金が必要です。特に高額になりがちな大学費用は、私立か国公立かだけではなく、学部によっても大きく異なります。一人暮らしの場合は、さらに住居費や生活費もかかるため、1,000万円近い資金が必要となる場合も。

「教育費の準備=学資保険のみ」と思い込んでいる方もいるかもしれません。けれど、教育費を準備する方法は学資保険以外にもあります。

今回は学資保険とつみたてNISAの特徴を比較しながら、ご自身に合った教育費の貯め方を見つける方法を解説します。


学資保険のメリット

学資保険は、「保障」を重視したい方におすすめです。

多くの学資保険には、契約者が死亡・高度障害になった場合にそれ以降の保険料の払い込みが免除され、契約はそのまま継続される「保険料払込免除」の特約がついています。そのため、万が一の場合でも子どもに確実に教育資金を用意できる、というメリットがあります。

また、万が一の場合に、学資保険が満期になるまでの間、育英費用として所定の年金が受け取れる「育英年金特約」や、子どものケガや病気に備える「医療特約」をつけられる商品もあります。希望にあわせて保障を手厚くすることが可能です。

学資保険の中には外貨建てのものもありますが、円建ての保険であれば満期で受け取る保険金は契約時に決まります。そのため、支払った保険料に対して受け取れるお金の割合である返戻率が100%以上の商品であれば、途中で解約しない限り元本割れすることはありません。銀行に預けているだけではついつい使ってしまうという方も、半強制的に定期的に口座から引き落とされるため、確実に貯められるというメリットもあります。

さらに、学資保険は生命保険料控除の対象となり、所得税・住民税の控除を受けることができます。生命保険料控除は「一般生命保険」「介護・医療保険」「個人年金保険」の3つに分けられ、学資保険は「一般生命保険」に該当します。一般生命保険料控除(新制度)の最高控除額は、所得税4万円、住民税2.8万円となっています。年収500万円の給与所得者が保険料を年間8万円以上支払った場合、税金の軽減額の目安は所得税で約4,000円、住民税で約2,800円、合計で約6,800円となります。

学資保険のデメリット

かつて学資保険には、支払った保険料総額よりも、受け取れる金額が多くなる商品が多くありました。けれど、最近は低金利が進み、支払った総額よりも受け取れる金額が少ない商品がほとんどです。

なかには、返戻率が100%を超える商品もありますが、資金を「増やす」という観点から考えると、期待できる数字とは言えません。銀行の普通預金に預けるよりは返戻率が高い商品もあるものの、将来のインフレリスクを考えると、「お金の価値」は下がってしまうことも考えられます。

また、学資保険は基本的に途中で引き出すことはできない点にも注意が必要です。万が一途中で解約してしまうと、戻ってくる解約返戻金は元本割れとなってしまうので、途中で解約する可能性が少しでもある場合は、他の選択肢を考えましょう。

つみたてNISAのメリット

つみたてNISAは、中長期の目線で資金を「増やす」という目的をお持ちの方におすすめです。

通常、株式や投資信託などの金融商品を売買することで得た利益や、受け取った配当に対して、約20%の税金がかかります。NISAを活用すると、投資で得た利益が非課税になるという点が最大の特徴であり、メリットです。

2023年現在のつみたてNISAの非課税枠は年間40万円、非課税での保有期間が最長20年となっています。来年の2024年からは新制度となり、つみたて投資枠での年間の非課税枠は120万円に増額され、保有期間も無期限となるため、さらに使いやすい制度となります。

また、少額から始めることができ、途中で積立金額を変更することも可能なので、無理なく自分のペースで積立を行うことが可能です。

さらに、長期でつみたてを行うことによって複利効果も期待できます。投資信託では、運用実績に応じて分配金が支払われますが、これを元本に組み入れて再投資することで、「利益が利益を生む」状態を作り出すことができます。これが「複利」です。

つみたてNISAは、分配金を毎月受け取らずに再投資に回す商品が制度の対象となるため、複利効果を期待しやすいといえるでしょう。これは新NISAでのつみたて投資枠でも同様です。

例えば、子どもが生まれてから毎月1万円ずつを年利3%で18年間積み立てると、18年後の積立金額は約285.9万円となり、元本合計が216万円なので、運用利益は約69.9万円となります。
※概算のため、手数料や税金などは考慮していません。

つみたてNISAのデメリット

つみたてNISAは投資なので、元本保証はなく、元本割れの可能性があることはしっかりと認識しておく必要があります。また、NISAは損益通算や繰越控除の対象外のため、損失が出ても他の課税口座の利益と相殺したり、損失を繰り越したりすることはできません。

特に、今回のような「大学費用」という目的がある場合は、資金が必要になる時期が決まっています。投資成績がよくないからといって、入学金の支払いを待ってもらえる訳ではありません。

ただし、「長期・積立・分散」で投資を行うことで、投資のリスクをおさえた運用を行うことは可能です。そのため、NISAを始める場合はできるだけ早くスタートし、長期間にわたって積立を行うことをおすすめします。

ライフプランに合った資産形成が大切

学資保険やつみたてNISA以外にも、教育資金を貯める方法はいくつかあります。例えば、定期預金や会社の財形貯蓄制度を利用することで、毎月決まった金額を貯蓄できます。

人生において準備が必要な資金は、教育費だけではありません。だからこそ、それぞれのご家庭に合った教育資金の貯め方を考えるには、しっかりとライフプランを立てて、長期的な視点で計画をシミュレーションすることが大切です。

ライフプランを立てると、必要な教育資金や時期が明確になるので、それ以外のライフイベントで金額や時期を調整するなど、柔軟な資産形成が可能となります。その上で、「年間収支が赤字になる期間はないか」や「極端に預貯金が少なくなる期間はないか」、そして「教育資金以外に必要な資金の準備に偏りはないか」といった点をチェックしましょう。

全体を俯瞰してみることで、それぞれのご家庭に合った方法を選択しやすくなります。

教育費は早めの準備が大切

「学資保険はもう古い」という声もあります。確かに返戻率が100%を切る学資保険が多い現状では、選択肢として選びにくく感じるかもしれません。とはいえ、何を重視するかによって、適切な選択は変わってきます。どの選択肢にも共通していえるのは、リスクの軽減や毎月の負担額を考えると、できるだけ早い時期から準備を始めた方がいいということです。

「お金のことが理由で、子どもの選択肢を狭めることはしたくない」と考える方がほとんどだと思います。ぜひ早めに家族全体での将来のライフプランを作成し、それぞれのご家庭に合った資産形成方法を選択してください。

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