マダニに噛まれて感染…致死率高い「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)」とは 症状や治療法、注意すべき季節まとめ【ペットドクター相談室】

 年々夏の暑さがひどくなっているような気がしますが、今年の夏も非常に暑かったですね。10月に入ってようやく涼しく、いや最近では急に肌寒くも感じるようになりましたが、まだ野外ではノミやマダニが活動しています。特にマダニは春と秋に吸血活動が活発になる季節です。油断しているとペットたちについてしまうことがありますし、思わず病気をうつされてしまうこともあります。今回はマダニから感染してしまう病気の中で、非常に怖い病気である「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)」についてお話ししたいと思います。

福井県獣医師会 開業部会 いなば動物病院(福井県坂井市)稲葉大輔院長

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重症熱性血小板減少症候群(SFTS)ってどんな病気?

 「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)」はマダニに吸血されることによりウイルスがうつされ発症する病気です。感染した動物の体液や血液に接触することでも感染することが確認もされています。2009年に初めて中国で報告された、比較的まだ発見が新しい病気で、国内では2013年に初めて報告がありました。

 感染し発症すると発熱と消化器症状(嘔吐や下痢)などが表れ、リンパ節の腫れや出血症状が出ることもあります。非常に致死率が高い、怖い病気であり、国立感染症研究所の発表では2013年から2023年7月末までに人の発症の報告が900名、そのうち101名が死亡しています(死亡率11%)。この非常に高い死亡率にから、一部マスコミでは「殺人マダニ」と見出しがついて報道されることもあります。

マダニに噛まれて死亡…北陸地方でも

 ペットである犬や猫たちも例外ではなく、全国でマダニに咬まれたことで発症したと疑われるSFTSに罹った動物たちも多数報告があります。残念ながら明確な治療法がなく、命を落としてしまうケースも珍しくありません。実際に北陸でもその報告はあり、石川県で犬がSFTSで亡くなった話を聞いた時は私たちも驚きを隠せませんでした。さらに先にも記載しましたが犬や猫たちが感染をすれば、その飼主のご家族もその犬や猫からうつされてしまうことが考えられます。ですから、人だけに限らず、犬や猫もマダニ対策はしっかり行ってほしいです。

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マダニ対策の治療薬は?注意すべき期間

 動物病院にはマダニ対策のお薬が各種あります。飲み薬のタイプ、首筋に滴下するタイプ、一度投与すれば長期間効果の持続するタイプなど、いくつかの種類もございます。それらを投与してあげることでマダニに咬まれるリスクをかなり抑えることできますので、SFTS対策にもなります。

 おすすめの投与期間は一年中と言いたいですが、マダニの野外での活動は想像以上に低気温でも続くので、3月~11月まではご注意いただきたいです。散歩で草むらに入るのが大好きなワンちゃん、外に出てしまう猫ちゃんの飼い主様は特に気にかけていただければと思います。

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