地域に愛され47年 日光の和風レストラン「きむら」月末で閉店 後継者不足、コロナも響く

従業員に囲まれる木村さん(右から3人目)、能子さん(同2人目)、仁一さん(同4人目)

 栃木県日光市木和田島の和風レストラン「きむら」が今月30日で閉店する。外食を楽しむ家族や祝い事などの席に料理を提供し続けて約半世紀。社長の木村秀夫(きむらひでお)さん(81)は「お客さんが来てくれることが励みになった」と振り返る。店内にはねぎらいや閉店を惜しむ地元客のメッセージが並んでいる。

 同店は1977年1月、大沢出身の木村さんが妻の能子(よしこ)さん(81)と開いた。調理学校を出た長男の仁一(じんいち)さん(56)も23歳の時に東京から戻り、親子3人で切り盛りした。

 提供するのは新鮮な魚や揚げ物が中心。広間は自治会の宴会や祝い事などにも利用された。「ここで結納を挙げた子に孫がもう3人もいる」と能子さん。47年間の思い出は、地域の喜びと共に過ごした時間だ。

 閉店を決めたのは1年ほど前。木村さんの孫で仁一さんの長男が2020年8月、病気のため27歳の若さで亡くなった。「後継者がいなくなったから」と木村さんは理由を話す。加えて新型コロナウイルス感染症の影響で客は激減。最近の人手不足も追い打ちをかけた。

 コロナ禍ではまったく営業できなかった日も多かったが、閉店することを知った客が訪れるようになって「今はすごく忙しい。『子どもの頃よく利用した』といって、わざわざ遠くからも来てくれるのがうれしい」と仁一さんは笑う。

 待合室のメッセージボードには、閉店を惜しむ声や思い出など、たくさんの声が寄せられている。

 「早朝から深夜まで、どんなに忙しくても苦にはならなかった。店を閉めるのは寂しいが、どこかほっとした気持ちもある」。木村さんはそう言って、穏やかな笑顔を見せた。

閉店を惜しむ声など客から寄せられたメッセージ

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