「配当利回り」を見るだけではダメ?気になる銘柄の“配当”が本当に割がいいかチェックする指標

今年、東京証券取引所が低PBR(※)企業に対策を要請したことをきっかけに、配当の方針を見直す企業が多く見られます。そこで、企業がどのように配当を実施しているのかを一度整理してみましょう。

※PBR=Price Book-value Ratioの略で、株価純資産倍率のこと。株価が割安か割高かを判断するための指標。


大幅に上がったら注意!配当利回りの見方

配当利回りとは、購入した株価に対して年間でどのくらい配当金を受け取れるかを示す指標です。予想配当利回りの計算式は「1株あたりの予想配当金(年間)÷ 株価 × 100(%)」です。

例えば1株あたりの配当金が20円で株価が1,000円の場合、【20円÷1,000円×100=2】で配当利回りは2%となります。仮に株価が800円まで下がった場合、【20円÷800円×100=2.5】で2.5%となり、配当利回りは高くなります。

このように、株価や配当金が変動することで、配当利回りは変化します。

配当利回りは3%を超えると高利回りとされています。

配当金が増加すると配当利回りは高くなりますが、株価が下落した場合も配当利回りは高くなります。もし、業績の悪化などで株価が下落して配当利回りが上昇した場合、将来的に減配や無配になるなどのリスクがあります。

保有している銘柄や買おうとしている銘柄の配当利回りが大幅に上昇した場合は、どのような理由で上昇したのかを調べることをおすすめします。

なお、10月20日現在、高配当銘柄は、JT(2914)、あおぞら銀行(8304)、アバールデータ(6918)などが挙げられます。

配当利回り以外にも参考にしたい「配当性向」

一方で、「配当性向」を上げる企業が増加しています。配当性向とは、企業が利益の中からどのくらいの割合を配当に充てているかを示す指標です。

【配当金総額÷当期純利益×100=配当性向(%)】、【1株あたり配当額÷1株当たり当期純利益×100(%)=配当性向(%)】で算出します。

配当性向が高い企業は株主に多くの利益を還元していることになり、低い企業は利益をあまり還元していないことになります。

ただし、配当性向が高いと多くの配当金がもらえるというわけではありません。例えば、当期純利益が低い企業の場合は配当金が少なくなります。

【A社】利益5,000万円×配当性向50%=配当金額2,500万円
【B社】利益9,000万円×配当性向30%=配当金額2,700万円

配当性向の目安は30%前後と言われています。

配当性向が高いということは、内部留保が少ないということになります。そのため高い配当性向が必ずしも良いということではありません。
また、新興企業は利益を配当金(株主還元)に回すより成長部門に投資して株価を上昇させるほうが株主の利益に繋がることが多いです。配当性向だけで判断するのではなく、企業の業績予想やこれまでの配当金額などとあわせて確認することが大切です。

なお、配当性向を高めると発表した企業は神戸製鋼所(5406)や四電工(1939)、トラスコ中山(9830)などです。

日経が指数を公表「累進配当」に注目

「累進配当」を実施する企業もあります。累進配当とは、利益成長により配当金を増やす、もしくは最低でも前年同額の配当を実施し及び減配しないことを言います。日本経済新聞社は2023年6月30日から「日経累進高配当株指数」の算出・公表を開始しました。実績ベースで累進配当を10年以上続ける企業のうち、予想ベースの配当利回りが高い順に30銘柄で構成されています。※【表】を参照

「日経累進高配当株指数」の指数に組み入れられていない銘柄では、三菱商事(8058)、三井物産(8031)、ニッコン(9072)などがあります。

「株主資本配当率(DOE)」も覚えておきたい

株主資本配当率(DOE)を取り入れる企業も増加しています。DOEは、Dividend on equity ratioの略で、株主資本に対して企業がどの程度の配当を支払っているかを示す指標です。【DOE(%)= 配当金支払額 ÷ 株主資本】です。丸井(8252)、UBE(4208)、エクシオG(1951)などが採用しています。

日経新聞社の集計によると今期配当総額は、約15兆3000億円で過去最高となります。上場企業の株式の約2割は個人が保有し、単純計算で約3兆円が家計に入るとの予想もあります。手元資金が積み上がっている企業が今後も増配などに踏み切る可能性もありそうです。

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