県内給油所、26年連続減 小規模店「やめるにやめられない」 販売量減少、老朽化、人手不足... 厳しさ増す

地域に根差す小規模給油所。設備の老朽化など直面する課題は多い=12日午前、矢板市泉

 栃木県内で26年連続の減少が続く給油所だが、市街地から離れた地域や過疎地では小規模な給油所が高齢者らの生活を支えている。冬季の必需品となる暖房器具の灯油も販売しており、なくてはならない存在となっている。ガソリン販売量の激減、設備の老朽化、人手不足。「地域のために」と営業するが、経営は厳しさを増す。県の団体関係者は「利益を確保できる業界にしないといけない」と危機感を強めている。

 「ガソリンの年間販売量はこの10年で半減した」。10月中旬、矢板市中心部から離れた北部の泉地区にある長久保油店で、代表の長久保次男(ながくぼつぎお)さん(75)が吐露した。

 店は60年ほど前、営業を始めた。昨年、二つある地下貯蔵タンクのうち一つが破損し、使えなくなった。修理は1千万円以上かかるため見送った。

 設備の不安は尽きない。給油機も使い始めて30年。店を継ぐ予定の長男長久保純一(ながくぼじゅんいち)さん(46)は「今ある設備でやりくりするしかない。地域のため営業を続けていく」と力を込める。客の8割は顔なじみだ。

 現在、給油所が1カ所の日光市足尾地域。10年ほど前は3カ所だったが、法律で古い地下貯蔵タンクの改修が義務付けられたことに伴い、廃業したという。

 「やめるにやめられない」。唯一残った斎藤商店の代表斉藤幸一(さいとうこういち)さん(56)は胸中を語る。車のガソリン販売のほか、足尾地域の山地の公共工事現場へ重機の軽油を配達する役目も担う。暖房器具に用いる灯油の配達は、高齢者宅を中心に重宝されている。

 今の悩みは従業員の確保といい「過疎地のアルバイト探しは大変」と漏らす。30年前に5千人弱だった足尾地域の人口は1500人ほどまで減った。「人も減れば収入も減っていく。あと何年やっていけるのだろうか」とも口にした。

 県石油商業組合の山口博之(やまぐちひろゆき)理事長(63)は「生活を支え、災害時にとりでと言われるのが給油所」と指摘。「ガソリン価格への二重課税などの問題がある。今よりも利益を確保できる業界にしなければならない」と強調している。

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