【沢井製薬】九州工場の不適切試験で調査報告書公表/テプレノンカプセル 50mg「サワイ」安定性モニタリングにおける不正に関する調査

【2023.10.23配信】沢井製薬は10月23日、九州工場の不適切試験で調査報告書を公表した。九州工場で製造するテプレノンカプセル 50mg「サワイ」の安定性モニタリングの溶出試験において、不適切な試験が行われていたことが判明したため、調査を行ってきたもの。

沢井製薬株式会社は、九州工場で製造するテプレノンカプセル 50mg「サワイ」の安定性モニタリングの溶出試験において、不適切な試験が行われていたことが判明したため、この事態を重く受け止め、外部の GMP 専門家及び弁護士を含む特別調査委員会を設置。本件不適切試験に関する事実関係の調査、原因究明及び再発防止策の検討を行ってきた。10月20日、特別調査委員会より調査結果報告書を受領したため、本件不適切試験に関して以下のとおりお公表した。同社は「製薬会社としての信頼を損なう事態を招いたことについて深く反省するとともに、患者さん及び医療従事者をはじめとする関係者の皆さまに大変なご迷惑、ご心配をおかけしておりますことを深くお詫び申し上げます。引き続き、全社一丸となり、当社製品を安心してご使用いただけるよう、一層の品質管理に努めてまいります」と謝罪コメント。なお、本調査の一環として、他製品において同様の事案はなく、品質管理が適切に行われていることを確認しているという。

1.不適切試験の概要と調査結果
(概 要)
本件不適切試験の内容
九州工場で製造する本件製品の安定性モニタリングの溶出試験において、承認書と異なる試験方法(別のカプセルに薬剤を詰め替えた上で溶出試験を行っていた)を実施していたことを確認した。

発覚の経緯と対応
2023 年 4 月に九州工場で実施した本件製品の安定性モニタリングの溶出試験において、本件不適切試験が行われていたことが発覚した。その後、速やかに社内調査を開始するとともに、同年 6 月、外部の GMP 専門家及び弁護士を含む特別調査委員会を設置することを取締役会で決議し、本件不適切試験に関する事実関係の調査を実施してきた。

他製品、当社他工場における類似事象の有無
九州工場の本件製品以外の製品及び九州工場以外の他の当社工場の製品も含めて、本件不適切試験と同様の事象がないことを確認している。

(調査結果)
九州工場で製造する本件製品の安定性モニタリング(製造販売の承認後の医薬品の品質が担保されていることを継続的に確認・保証すること)における溶出試験について、2015 年以降、カプセルから内容物である顆粒を取り出して別の新しいカプセルに詰め替える作業を行った上で、当該詰め替え後の検体を用いて溶出試験を実施し合否判定を行う不正行為(本件不適切試験)が継続的に実施されていた。
本件不適切試験は、2013 年に実施された本件製品の安定性モニタリングにおける溶出試験で規格外(OOS)の結果が発生した際に、当時の九州工場の上層部において、GMP(医薬品の製造管理及び品質管理の基準)に基づく手続を怠ったことを契機として実施された。すなわち、当時の上層部において、規格外(OOS)の結果を受けて、溶出性の低下の原因を調査するためにカプセルを詰め替えて試験を実施することを指示したものの、GMP に基づく正式な社内報告や原因究明・是正措置等を行うことなく、カプセルを詰め替えて実施した試験による規格内の結果をもって、当該溶出試験に関する GMP 上の手続を終了していた。このような処理を受けて、本件製品の安定性モニタリングにおける溶出試験では、カプセルを詰め替えて実施した試験による規格内の結果をもって処理することが、上層部からの指示であると考えた試験担当者らにより、本件不適切試験が継続的に行われていた。
また、管理職以上の上層部が、本件不適切試験の実施を指示し又はこれを黙認した事実は認められなかったが、監督体制の不備により、本件不適切試験が実施されていることを検出することができず、長年にわたり本件不適切試験が継続されていた。
本件不適切試験が行われ、継続して実施されてきた原因について、人的要因に起因する問題として、①安定性モニタリングを軽視する風潮の蔓延、②上司の指示に疑問を持たずに従う傾向、③試験関与者のGMP に対する理解の欠如が、物的要因に起因する問題として、①品質管理・品質保証の観点からの実効的な監督体制の不備、②試験記録管理の不十分さ、③試験を担当する品質管理部の業務過多及び人員不足が挙げられる。
調査結果の詳細については、「調査結果報告書(概要版)」を公表している。個人情報保護及び機密情報保護の観点から、概要版では内容を一部要約している。

2.テプレノンカプセル 50mg「サワイ」(本件製品)について
本件製品の安定性モニタリングの対象のロット(36 か月時点)において、溶出試験が承認規格に適合しない結果が得られた。これを受け、検証した結果、市場に流通している製品について、使用期限内の品質保証は難しいと判断し、本年 7 月に使用期限内の全ロットを自主回収することとした。
本件製品の出荷時の全試験項目及び安定性モニタリングにおける他の試験項目は全て規格に適合していることを確認している。また、当該ロット及び各キャンペーン※1 の代表となる参考品※2 の溶出試験の結果は承認規格内であったことから、有効性、安全性に大きな影響を与える可能性は低く、重篤な健康被害が発生する恐れは極めて低いと考えている。なお、現在までに本件不適切試験に起因すると考えられる健康被害の報告はない。
※1 キャンペーン生産:1 つの品目を連続して一定ロット数生産することを指す。
※2 参考品:出荷した製品に不具合が生じた場合等、出荷後に製品の品質を再確認する必要が生じた場合に備えて保管する試験検査用の検体を指す。

3.再発防止策
同社は、特別調査委員会の調査結果報告書による本件不適切試験に関する原因分析及び再発防止策の提言を真摯に受け止め、以下の再発防止策を策定し、信頼の回復に向けて全力で取り組んでいくとする。
なお、当局により、追加の指示や指導があった際には、真摯に対応していく方針。
(1) 社長直轄の企業風土改革プロジェクト立ち上げ
個人と会社の成長が実感でき、社会に貢献し続けられる企業となり、風通しが良く、互いをリスペクトし、切磋琢磨しあえる職場環境の再構築を目指し、社長直轄の企業風土改革プロジェクトとして、以下の施策を実施する。
・意思決定プロセスの透明性を高めること等による企業ガバナンスの再構築
・再教育や日常の注意喚起を継続することによる法令遵守、コンプライアンス精神の浸透の徹底
・全社レベルでの適材適所登用の推進のための人事制度見直し
・社内外からの有能な人材の積極登用
・本社管理部門の体制や機能の見直し強化
・内部通報システムの活用の推進強化
・社長と従業員の直接対話の場の設置、“社長メッセージ”定期発信による経営陣と従業員との対話の促進

(2) 既存上市品の製造面及び品質面での再評価とその対策実施
既存上市品の製造面及び品質面の再評価を実施し、問題点があればその解消のための対策を策定・遂行するため、社内体制を整備し、再評価のための優先順位付けを行うなど具体的な対応策を実施していく。

(3) 同社生産本部における再発防止策の実施
当社生産本部の責任役員は、主体的に以下の再発防止策の実施を推進していく。
・全従業員に対する GMP 教育の再実施と継続実施
・責任役員を含む管理職、監督職の責任の明確化
・管理職、監督職、実務担当者対象の層別教育プログラムの効果検証と実施内容の見直しによるコンプライアンス意識の徹底
・工場の品質管理部門、品質保証部門への社内外からの人材確保推進
・管理職、監督職層の 3 現主義(現場、現実、現物)の徹底のための施策の実施
・作業手順書と実作業に相違がないことの検証の継続
・作業資格制度の運用の厳格化
・データインテグリティ確保のためのシステム導入

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