妊娠後がん発見し子宮全摘出、向井亜紀さん「自分が許せなくなった」 当時の葛藤、仕事と治療の両立…福井県で明かす

がん患者の仕事と治療の両立について語る向井亜紀さん=10月22日、福井県福井市のアオッサ県民ホール

 福井県済生会病院集学的がん診療センターの市民公開講座「がんと共に生き、がんと共に働く」(福井新聞社共催)が10月22日、福井県福井市のアオッサ県民ホールで開かれた。参加した市民らは、がん治療を乗り越え活動を続けるタレントの向井亜紀さん(58)の講演などを通して、がん患者の就労と治療の両立に向けた周囲のサポートや理解することの大切さを学んだ。

 これまでに18回の手術を経験しているという向井さんは、同病院の笠原善郎院長と対談。仕事と治療を両立させるこつについて「仕事に復帰すると張り切ってしまい、実際に2日で病院に戻ったこともある。仕事や家事はほどほどに、頑張り過ぎないことが大事」と強調。仕事仲間から「ゆっくり治して戻ってきて、いつまでも待ってるから」と掛けられた言葉がうれしかったとし、周囲のサポートや理解、仲間の存在が大切と訴えた。

 笠原院長は「働く自信がない、迷惑をかけたくないなどを理由に、がんと診断された人の3割が仕事を辞めてしまう」と説明。「職場の理解が進み、がんになっても当たり前に働ける雰囲気が浸透していってほしい」と話した。

 向井さんは対談に先立つ講演で、妊娠後に子宮頸(けい)がんが見つかり、子宮全摘出の手術を受け、小さな命を失った当時の心境を赤裸々に語った。一時「自分が許せなくなった」とふさぎ込み、予後が悪く敗血症などに苦しんだ経験に触れ、「どんな小さなことでもいいので、胸のスクリーンに明るい未来を映してほしい。そうすることで自分の心と体を立ち直らせることができる」と前向き思考の大切さを語った。

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 このほか、同病院のがん相談支援センター専門相談員から、22年の相談件数は934件で、うち422件(45%)が就労関係に関する相談だったことなどの報告があった。

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