【開催報告】林業のはじめ方と必要なスキル

2023年7月20日(木)に、田村市の現役のきこり(林業従事者)たちが登壇し、林業のはじめ方と必要なスキルについてお話しする、オンラインイベントを開催しました。
移住先の仕事の候補としてよく挙げられる『林業』。山の中で木を切っているという漠然としたイメージはあるけど、チェーンソーや重機の資格がなくては従事できないのではないか。そんな実情がなかなか分からないからこそハードルの高さを感じる林業について、移住後に林業の道に進んだ伊藤楓子さん(田村森林組合)と、林業の会社を設立した桑原直人さん(フォレストクリエイト合同会社代表)に詳しくお話しいただきました。

ゲスト:
桑原直人さんフォレストクリエイト合同会社代表)
林業の担い手育成を目的とした助成制度「緑の雇用」を活用し、20歳から林業に従事し、今年で21年目に突入。2015年に独立し、個人からの委託業務を中心に、調査業務から、伐木、搬出、丸太運材、特殊伐採も行っており、2023年に法人化した。

・伊藤楓子さん(田村森林組合
田村森林組合につとめている。千葉県成田市出身。
高校卒業後、東京で6年公務員をしていたが移住を決意。去年8月に移住。林業従事してまだ1年経っていない。福島県を中心に就林先を探し、女性の受け入れ態勢、林業の領域などから田村森林組合に入組。現在は造林班として現場作業を担当。

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実はそこまでハードルが高くない!林業のはじめ方

田村市生まれ田村市育ちの桑原さんは、二十歳から林業開始し現在キャリア21年目の大ベテラン。田村森林組合に勤めている伊藤楓子さんは去年8月に移住してきたばかりの新規林業従事者です。それぞれ違う立場のお二人に、どのようにして林業をはじめたかを詳しくお聞きしました。

──お二人の仕事内容について教えてください。

伊藤さん:森林組合にて作業員として終日現場で働いています。林業は造林、育林、素材生産、加工という分野に分かれていて、私は山を作る「造林班」に所属。林業の世界に入ってまだ1年未満ですが、その間にやった仕事は「植え付け」「チェーンソーを使った間伐」「刈り払い機を使った下刈り」などです。

桑原さん:私も同じことをしていますが、一つ違うのは「特殊伐採」をすること。特殊伐採は通常は下から切るけれどそれができない木などに対して、上から登って切っていくことです。田村市は中山間地域であり、家の裏手に山があるところが多いのですが、その木を切った後にでた木材を素材としてどのように活用するか、素材生産の技術や知識も必要になってきます。また木を切った後に山になにかを植える植林、山を管理するということも行っています。

──田村森林組合の主な作業内容を教えてください

伊藤さん:大きく分けて、製材加工部門、技術部門、事務部門の3つに分かれてます。私は技術部門。造林だけでなく、重機で木を切ったり搬出したり、特殊伐採をしたりなども行います。加工部門は丸太の皮を向いて木材として加工し、事務部門は作業計画を作ったり先方との打ち合わせなども行います。

──冬や梅雨の時期は何をするのでしょうか?

伊藤さん:冬期は間伐したり土留をしたり。雨の度合いにもよりますが、次の現場の下見とか機械のメンテナンスなどをしています。仕事自体がなくなることはありません。

桑原さん:うちは年間通して作業してます。雨で作業が中止になることもありますが、梅雨の時期は下刈りをしたりします。隔週休みなので、その分を出勤日を別の日にずらしたりします。

──お二人はどのようにして林業をはじめたのですか?

伊藤さん:インターネットで「森林(もり)の仕事ガイダンス」という就職セミナーを発見して参加しました。誰でも申し込みできて無料でいろいろな会場でやっているため参加しやすいと思います。都道府県ごとにブースがあり、移住に関する資料などもありました。そこから住みたいところと応募条件に合う会社をピックアップしていき、田村森林組合に応募しました。

桑原さん:私の場合は20年前だったのでスマホはありませんでした。山で働きたいと思った時に、ハローワークで「森」と検索したら森林組合が出てきて応募。現在は独立していて採用する側になりましたが、人材募集は仕事を通して知り合った方からの紹介や、ハローワークに求人を出したりしています。ただ、私が現場に出れなくなると大変なので、学生さんの就活の時期などにあわせて求人情報を公開しています。林業に従事する際にマニュアル免許が必要にはなりますが、入社後に取得してくれれば問題はありません。

──林業に必要なスキルは何だと思いますか?

伊藤さん:前もっては、資格も何もいりません。私がその状態で入社しましたが、今まで林業をしていて難しくてできなかったという作業はありませんでした。入社後にしたのはチェーンソーや刈り払い機の使い方の講座の受講くらいかな。入社前はスキルがないことが心配だったが、やってみたら大丈夫でした。

桑原さん:強いていえば、体力がある人。資格は不要で安全講習を受ければ林業に従事できるため、ハードルは低いと思います。林業は自由度が高いので楽しいですよ。特殊伐採はどちらかというと設計図に沿って行っていく作業なので、マニュアルがあった方がいいという人に向いているますね。ひとことで林業と言ってもいろいろな種類があるので、その中で選ぶこともできます。

──林業で使う資格や技術について教えてください。

桑原さん:講習を受けに行って取れる資格がほとんどです。

・普通救命講習(AEDなどの使用方法など)
・刈払機取扱作業者に対する安全衛生教育
・伐木などの業務に係る特別教育(チェーンソー技能など)
・玉掛け(ワイヤーをかけるための技術)技術講習
・小型移動式クレーン運転技能講習

また、『緑の雇用』という制度もあります。林業を始めたばかりの人が、3年かけて様々な技術を身につけることができる新規従事者向けプログラムです。就業先が国の認定事業者であればこの支援制度を受けられるため、その点も考慮して就職先を選ぶ基準にするのもオススメします。

伊藤さん:『緑の雇用』は仕事をしながら受講するコースと、座学や実技を行いながら学ぶコースに分かれています。緑の雇用では些細なことでも質問できるし、ゆっくり学ぶこともできるます。

桑原さん:同等のスキルを持った人材を育成できるというメリットはありますが、自分の林業というものをイメージして受講していくといいかもしれませんね。

──林業に向いている人とは?

伊藤さん:自分の好きなもを優先させられる人。私自身のことですが、自分の体を使ってできる仕事がしたかったということと、海と山があるところに移住したいという思いがあったんです。自分の人生を振り返った時にいいものだと思えるように、自分の機嫌をとることを優先したら林業にたどり着きました。自分のことを知ることが大切です。

桑原さん:満員電車や人混みが苦手な人。山に行くと人間社会から隔離された世界なので、そういう場所が好きな人は向いています。それと、責任感が強すぎない人。人から預かった山を変えてしまう仕事なので、結構責任重大です。それを深く考えずにやれる人は向いていると思います。責任感は重大ですが、物怖じしてしまっては進められないので。

──現在の林業業界は人材不足ですか?

桑原さん:震災後に人材が半分ほどに減りました。人材不足の背景があるため、組合や民間も常に求人を出している状態ですね。

──林業は稼げますか?

桑原さん:自分で仕事を作ることが大事です。補助金に頼らずに、困っている人や求めている人に対して業務を行うことで社会のためになります。誰かのためになる林業を行うと、収入も増やすことができますね。

──林業の魅力は?

桑原さん:好きなことを仕事にするのは難しいと思いますが、林業は「山が好き」「自然が好き」という気持ちだけで仕事にできるところが魅力だと思います。

伊藤さん:動物が大好きなんですが、林業作業中に鳥のヒナを発見したり、ウリ坊を見たり、ムササビに遭遇したり、作業しててとても楽しいです。

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林業にチャレンジしてみたい!そう思ったら、まずは現地体験ツアーへ!

福島県田村市では、9月中旬より田村市での現地林業体験ツアーを開催いたします。生木の伐採やチェーンソー体験、林業事業体の見学、田村市内の林業事業体との交流などを通し、林業の仕事を体験。林業にご興味のある方はぜひご参加ください!

【福島県田村市林業体験ツアー】田村の森できこりになる。2023 KIKORI START UPツアー

また、林業だけではなく農業やオーダーメイド体験ツアーなども随時開催しております。詳しくは「たむら暮らし」ホームページをご覧ください。

今回もたくさんの方にご参加いただきました。参加者からは、
・林業に関する生の話しを聞ける機会でとても参考になった
・林業を始めるハードルが高くない事を知ったことで安心。働きながら学べる緑の雇用の存在も大きいと思った
・本当に好きな仕事をしている、充実した生活を送っているところがとても羨ましいと思った
との感想をいただきました。

たむら移住相談室では今後も、田舎での暮らしを満喫されている方や活躍する地域プレーヤーをゲストにお迎えしてオンラインイベントを行います。ぜひ今後の情報もチェックしてみてください。

たむら暮らし

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