「クマと格闘」男性けが 富山・安養寺

男性が襲われた現場で警戒する警察官と猟友会員=富山市安養寺

  ●民家納屋で襲われ 敷地内で1頭駆除 人身被害県内5例目

 23日午後2時50分ごろ、富山市安養寺の民家の納屋で、家人の親戚男性(72)がクマに襲われた。親族と富山県によると、男性は富山市民病院に搬送され、顔や左太もも、両手に全治1カ月のけがを負った。命に別条はない。猟友会員が付近を捜索し、同4時24分に成獣1頭を民家敷地内で駆除した。県内のクマによる人身被害は今年に入り5件目となった。

 男性の親族から「男性1人がクマと格闘しけがをした」と110番があり、富山南署員、県と市の職員、市鳥獣被害対策実施隊員が現場付近を捜索。クマの潜伏が濃厚なため、現場周辺は厳戒態勢が敷かれた。

 富山南署によると、射殺されたクマは体長約1.2メートル、体重約80キロのオスで、推定4歳。市鳥獣被害対策実施隊員の猟友会員が納屋から出てきた所で発砲した。

 現場は国道41号近くの住宅街で、クマの通り道とされる熊野川沿い。17日にクマに襲われたとみられる女性(79)の遺体が見つかった民家から西に約2.5キロで、20日には現場の隣の民家で「自宅の庭にクマがいる」と同署に通報があり、柿の木に引っかいた痕跡があった。市は今回の被害との関連を調べている。

 被害に遭った男性のめいで、現場となった民家に住む安守佳美さん(47)は「隣の家で目撃があったが、もう他の場所に移動したと思って安心してしまっていた」と動揺し、叔父のけがの具合を気にした。

 安守さんによると、叔父は近所に住んでおり、訪ねて来た際に襲われたとみられる。被害が発生した当時は、自宅にいた妹が悲鳴を聞き、叔父から「救急車と警察を呼んでくれ」と頼まれたという。

 熊野地区自治振興会の若林義博副会長(77)は地区内でのクマの出没多発に触れ「(射殺されて)少しは安心したが、まだ油断できない」と語った。

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