商店街の上空襲う黒い大群、朝にはふんや羽が… 頭抱える商店主、ねぐらのケヤキはシンボル「切れない」

夕方、集団でねぐらへ向かうムクドリ=加古川市加古川町篠原町

 近ごろ夕方になるとJR加古川駅周辺の上空が騒がしい。黒い集団が襲来し、あまりのうるささに思わず上を見上げる人もいる。「犯人」は群れをなすムクドリ。朝になると歩道にふんや羽根が散らばり、周辺の店主らは頭を抱える。解決策はないのだろうか。(中川 恵)

 10月初旬の午後6時前。ベルデモール加古川(加古川駅前通商店街)入り口のケヤキにムクドリが集まる。鳴き声は「チュンチュン」のようにも聞こえるが、数が多く聞き取りづらい。通りがかった人が何事かと上を見上げ、追い払おうと手をたたく。「ふんに当たらないように木の下を避けて通る」という人もいる。

 「困る。いないに越したことはない」とは和菓子店「三河屋」の店主大川弘純さん(51)。ムクドリが来るようになったのは10年近く前からで、ほぼ毎年9月半ばから11月半ばの2カ月、騒音や「ふん害」に悩まされる。小さな羽根が舞う上に、雨が降った日は臭いがきついという。

 通りは加古川市道で、普段は商店街振興組合が管理する。行政や商店街の有志が定期的に掃除をするが、なかなか汚れが落ちない。ふん害のひどさは年によるというが、今年は清掃が追いつかないほどで、商店街の関係者は「困り果てています」とこぼす。

 市土木総務課によると、ムクドリがケヤキをねぐらにしているという。何年か前には嫌がる音を鳴らすなどの対応をしたが、効果は限定的だった。市はムクドリがすみ着かないように高木の剪定(せんてい)や枝切りで光を入れることを提案するが、商店街側は木の生育を損なう可能性があると難色を示す。「ベルデ」は緑を表すなどケヤキは商店街の顔でもあり、「シンボルを切ることはできない」という。

 鳥の行動に詳しい県立人と自然の博物館(三田市)の太田菜央研究員によると、ムクドリは秋冬に「集団ねぐら」を作ることが多く、騒音を起こす要因になっているという。隠れやすく居心地の良い木をねぐらにすることから、居心地を悪くするために振動を与えたり、LEDライトを当てたりする対策を取る自治体もある。太田さんは「これで解決、というものは今のところない。ムクドリも安全な場所を確保するのに必死なので、何とか無理なく共存できる方法が見つかれば良い」と話している。

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