「六甲山」ってどこの山? まさかの正解に驚き 専門家も苦笑「有名なのにけっこうアバウト」

住宅街の背後にそびえる山並み。どれが六甲山?=2022年1月、神戸港上空から撮影

 「六甲山ってどこですか?」と、神戸の地理に不案内な人に聞かれたら、あなたはどうしますか-。海から見れば、住宅街の後ろに連なる山並みを自信満々に指をさせるはず。しかし「あの高い山が全部? どれが六甲山?」と重ねて質問されたら、一気にその自信はなくなりそうだ。

 そういえば、六甲山とはどの山のことなのだろう? あまりに身近にあるので考えたことがなかった。

 山というと「△」の形で、三角形の上の頂点がいわゆる山頂。しかし、神戸の住宅街の背後にそびえる壁のような山並みは東西に非常に長く、「△」がたくさんあって山頂も多そうだ。全て六甲山? ということは六甲山はたくさんある? いや、まさか-。

 「さすがにいくつも六甲山はないですが、山並み全体を『六甲山』と呼ぶのは間違いじゃないと思いますよ。ただ、厳密には『六甲山系』や『六甲山地』と呼ぶのが正しいかもしれませんね」

 そう話すのは、六甲歴史散歩会代表の前田康男さんだ。前田さんは六甲に魅せられて半世紀以上。ほぼ全ての登山ルートを歩き尽くし、山の歴史も研究している。

 六甲山系は直線距離で、神戸市西部から宝塚市までの東西約30キロ。前田さんによると、その間には大小たくさんの山々が連なり、摩耶山のように名の知れた山もあれば無名の山も数多く含まれるとのことだ。

 確かに「六甲山」と冠した山歩きや観光などを扱う本・雑誌を見ると、「六甲山の中にあるいろんな山」の名前が出てくる。登山愛好家が憧れる「六甲全山縦走」もよく考えると変わった表現だが、「六甲山系を西から東まで全て踏破」と解すれば分かりやすい。

 「有名な山なのに、けっこうアバウト(大まか)なんです。どこか特定の山を指して『六甲山』というのはなく、習慣的にこの辺り一帯の山を『六甲山』と呼んでいます。まあ、それはそれでいいのでは」。前田さんが苦笑しながら説明する。

 本シリーズでも便宜上、六甲山系全体を「六甲山」と呼ぶことにするが、特定の山としての六甲山が厳密に言うと「ない」というのは、いまさらながら驚いた。そうすると、「六甲山頂」もないのだろうか。

 「これまた厳密に言うとないです。六甲山系で一番高い場所はありますが、独立峰ではないので『六甲山最高峰』などと言われていて何となく曖昧です」

 山がないから山頂もない。だから山頂ではなく最高峰と呼ぶ-。なるほど、うまく言ったものだ。 (安福直剛)

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 記者がぶらっと歩いて、まちの魅力をリポートする「てくてく神戸」。第6弾は「六甲山編」と題し、六甲山の中で最高峰周辺にまつわるエピソードを紹介します。=随時掲載=

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