苦しみや悲鳴を笑顔に…所沢市長に小野塚氏 響いた子育て支援策、投票率も上昇 泉氏「所沢の夜明け」

支持者らと初当選を喜ぶ小野塚勝俊氏(前列中央)。右は前兵庫県明石市長の泉房穂氏=22日夜、埼玉県所沢市緑町

 22日投開票の埼玉県所沢市長選は、無所属新人で元衆院議員の小野塚勝俊氏(51)が、現職の藤本正人氏(61)=自民、公明推薦=と介護福祉士で新人の杉田まどか氏(45)の無所属2氏を破り、初当選した。前兵庫県明石市長の泉房穂氏とタッグを組んで子育て支援策を訴えるなどし、支持を広げた。「市民の苦しみや悲鳴を笑顔にしていく」と語り、中核市移行や保健所の設置を見据える小野塚氏。選挙戦では自民党県議団が9月議会に提出し撤回した虐待禁止条例改正案の影響も注目された。

 「よーし」。小野塚氏初当選の一報が入った22日夜、所沢市緑町の選挙事務所は歓声と拍手に沸いた。「市民が12年間の市政に怒っていた。『これまでの苦しみや悲しみがあったから変えてほしい』という声に応える」。小野塚氏は決意を述べた。

 事務所には泉氏も駆け付けた。「所沢の夜明けが来た。小野塚君は徹頭徹尾、真っすぐ市民の方を向いていた」。こう喜びを共有した。

 小野塚氏が「完全無所属」で立候補の意向を明らかにしたのは9月13日。3氏の中で最も遅い出馬表明だった。

 選挙戦で小野塚氏は、泉氏が明石市長時代に取り組んだ18歳までの医療費無料化や小中学校の給食費無料化などの子育て支援策を挙げ、「明石モデルを所沢バージョンに」と主張した。街頭で応援のマイクを握った泉氏は「所沢は可能性がある街。明石を超えてほしい」と後押しした。小野塚氏陣営の演説には、子ども連れらも耳を傾けていた。

 市長選告示の直前、県議会は子どもだけの留守番など放置を禁じた自民県議団の虐待禁止条例改正案の撤回に揺れた。小野塚氏は初当選から一夜明けた23日、「所沢には(撤回された)条例案と考えを一にする『育休退園』がある。(下の子の育児休業を取得すると、上の子が保育園を退園になってしまう)育休退園が取り入れられた時、子育て世代は怒っていた。市のリーダーを代える時に、痛みとして思い出されたのではないか」との見方を示した。

 投票率は38.80%で前回市長選(31.99%)から6.81ポイント上回った。泉氏は「市長選挙でこれだけ上がるのは珍しい。市民は投票行動で返してくれる」。小野塚氏は「つらかった、変えてほしい、という方が投票に行ってくれた」と話し、「泉さんの存在感は大きかった」と振り返った。

 小野塚氏が軸に据える政策の一つが、中核市への移行だ。「就任初日(30日)に表明する」としている。中核市になると、市独自の保健所を設置することなどが可能になる。小野塚氏は「市民の命と健康を市が守る」と述べ、設置に向けて取り組む方針を示す。

 一方、藤本氏は3期12年の実績を強調し有機食材による給食の無償化などを掲げたが、4期目はならなかった。23日、取材に「政策ではちゃんとやってきた。伝え方ができていなかった」と語った。

 杉田氏は「福祉の専門家」を訴え、同市2人目の女性市長を目指したが、支持を広げられなかった。

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