【配当】や【株主優待】狙いでも情報収集は必要?よゐこ有野「そう言われると…」

お笑い芸人・よゐこの有野晋哉さんが、毎月さまざまな専門家をゲストに迎えて、お金の知識を身に付けていく「お金の知りたいを解決!お金の学園〜学級委員・よゐこ有野晋哉〜」。2023年10月は金融アナリストの三井智映子先生に、株式投資について伺いました。

今回は、「投資する前に見るべきポイント」について解説いただきます。


有野晋哉(以下、有野):いやぁ、ついに「ゲームセンターCX 有野の挑戦 in さいたまスーパーアリーナ 20周年大感謝祭」も、もう目の前やなぁ。「ゲームセンターCX」で10周年イベントやった時に、ボケで「次は、さいたまスーパーアリーナでやりたいです!」って言うたのに、ホンマにやる事になるなんて思ってもなかったもんな。「どのゲーム機も起動出来ません!」「えー!」ってところで目が覚めるってこともなく、夜はスヤスヤで、まだ緊張感がないのが怖いなぁ。

三井智映子(以下、三井):さいたまスーパーアリーナでソロイベントなんて、本当にすごいですね! なかなかできることではないと思います。

有野:単にゲームが好き、っていうだけで始めたことですけど、まさかこんなに多くの人たちに応援されることになるなんて。本当にありがたいことですよ。

三井:さて、私の授業は今回で最後ですが、有野さんにとって何らかのきっかけになれば嬉しいです。

有野:あ、もう4時間目か! 以前の「お金の学園」の授業でも、「投資したほうがいい」って教わって、とりあえずNISA(少額投資非課税制度)とか(個人型確定拠出年金)を始めたわけやけど、株式投資もこれからなので、まだ投資家の入り口に立っただけで、何にもわかってない気がします。わかってるのは、「iDeCoがちょっとだけ損してる」ってことだけです(笑)

三井:NISAやiDeCoは、基本的に長期投資が前提なので、初めてから1、2年で結果を求めるものではありません。それに株式投資は、まず「やってみる」ことも大事です。やってみて初めて、いろいろと気付くことが出てくるからです。そうはいっても、あまり準備をしないで臨むのも分が悪いので、今回は「個別銘柄への投資」を始める前に、見るべきポイントをチェックしていきましょう。

最初は企業サイトのチェックから

有野:個別銘柄か~、やっぱり僕は、優待狙いが合ってそう、ってところまではわかりました。早く「優待ライフ」を楽しみたいので、何をどうやって調べたらいいか教えてください!

三井:前回の「株主優待狙い」や、前々回の「配当狙い」も個別銘柄への投資ですが、それらの投資についても、投資する前に最低限のチェックはしておきたいところです。いくら長期投資が前提とはいえ、やっぱり株価が大きく下がってしまうと心配になりますし、業績が悪いと配当が減ったり、あるいは無配に転落したりする可能性があります。また、株主優待が廃止されるリスクもあるわけです。

有野:え~っ、優待が欲しくて買ったのに、モノが貰えなくなってまうかもしれない、ってことですか? それじゃあ、持ってる意味がなくないですか。

三井:そうですね。2回目の授業でも少しお話ししましたが、私は「自分がその銘柄を買った理由がなくなったら売る」のをマイルールにしています。長期保有で株主優待をもらって、楽しみながら投資をしようと思って買ったのに、半年や1年で優待がなくなって手放す……なんてしたくないじゃないですか。それを避けるためには、やはり最低限のチェックは必要でしょう。

有野:なるほど! やっぱりチェックは必要や。そのチェックですけど、テレビや雑誌とかで紹介された流行をヒントに、買う銘柄を探すって言ってませんでした?

三井:それは、買う銘柄の「候補」探しですね。自分の趣味や街歩き、テレビや雑誌、家族との会話、実際に株式投資をしている人たちとのやり取りなど、いろいろとやり方はありますが、これらはまだ「情報収集」の段階です。たとえば、人から「この銘柄いいよ」などと聞いて、自分でなにも調べずに買うのは、よくないですね?

有野:それは絶対そうです! でも、やっぱり自分で調べるのは、何から手をつけていいのか、って考えたらやっぱり大変そう、って思っちゃいます。調べるって、何を調べればいいんですか?

三井:いまは、誰でもインターネットで情報を収集できる時代ですから、ひとまず、その会社のサイトを調べてみるのがいいでしょう。

有野:それも分からないんですよ。会社のサイトで何を調べるんですか? 「この会社は創業何年かぁ」「CMに、あのタレントさんを使ってるんや。お金かけてるなぁ〜」とか知って、「なるほど、ここの株は買いやっ!」ってなりますか?

三井:広告戦略はその会社にとって重要な成長の要素ですから、あながち間違いではありません。ただ、それより先に、「その会社の主要なビジネスはなにか、いま何に力を入れているのか」「その主要ビジネスは儲かっているのか、成長しているのか」。さらに、「いまどんな新しい事業を始めようとしているのか、その事業は将来的な成長が見込めそうか」など、会社の基本的な情報や、成長が期待できるのかについてチェックしましょう。

有野:うわぁ~、その調べる項目の多さが大変そうやなぁ、って感じてしまうんですよ。何を調べて、納得できたら、次はコレ調べる、納得出来なかったら、コッチ調べる、納得出来たら、ココを調べて、こうなってたら良し、こうだったら待て……とか。チャートになってるのがあればなぁ。

三井:確かに、慣れていないうちは大変かもしれません。でも、大切なお金を投じるわけですから、最低限、調べておきたいポイントです。配当や株主優待がもらえなくなってしまう可能性だってあるわけですから。

有野:ごもっともです(笑)

「まずはやってみること」も大事

有野:さっき話してはった、会社の成長を調べるのが大事、ってことはわかったんですけど、それってどうやって調べたらいいんですか?

三井:会社の基本的な情報や現在の状態をまとめている専門的な雑誌やサイトを見る手もありますが、まずはその企会社のサイトにあるIRページをチェックするのがいいと思います。IRは「Investor Relations」の略で、投資家に対する広報活動を意味します。IRページでは、「決算短信」という決算情報をまとめたものや「決算説明資料」、さらには投資家向けのニュースなどを見ることができます。

有野:新しいワードがいっぱい出てきた(笑) そういう資料を見たら、初心者でもすぐにわかるもんなんですか?

三井:数字やテキストが多い決算短信はともかく、決算説明資料は基本的に図表や画像などを用いて、どんな投資家向けにわかりやすく説明されています。なかには、その企業が属している業界やマーケットの動向を紹介しているものもあるので、さまざまな項目や要素を知ることができる重要な資料です。

有野:「資料」って聞くと、読むのが面倒になってまうねんなぁ。ゲームする時にも、説明書は読まないタイプやし(笑)

三井:ゲームは説明書を読まずに、やって覚えるタイプの人も少なくなさそうですね(笑) ただ、ゲームはゲームオーバーになってもやり直せますが、株式投資では簡単に取り返せないほどの損をしてしまうと大変です。もちろん、ちゃんと調べたから必ず勝てるわけではありませんが、なにも調べないよりは上手にプレーできるでしょう。

有野:確かに、その通りですね。ゲームと違って実際に自分のお金が増えたり減ったりするわけですもんね。ちゃんとしないと。

三井:ゲームを買う時に、たとえば「この何本かのゲームのうち、一番楽しそうなのはこれ」など、発売前の情報を調べて買うソフトを選ぶことがあると思います。株を買う時にも、競合他社との比較や、業界全体の動向をチェックしたほうがいいでしょう。いくら現時点で調子がよくても、斜陽産業だったり、業界全体の調子が悪かったりすると、好調が長続きしない可能性もありますからね。

有野:昔のゲームは、ソフトのパッケージで「なんかおもしろそう」っていう理由だけで買って、プレーしてみたらクソゲーやった、ってことが少なくなかったなぁ。ゲーム誌が出てレビューを読んで買うか決めたり、今はネットの口コミでいろいろゲームの内容とか面白さが伝わってくるようになって、変なゲームを買わなくなりました。あ、これも一応調べてる、ってことになるわけか。

三井:ほかに、長期で保有するならその会社の財務状態もチェックしておきたいところ。もし、配当狙いで買うとして、財務の健全性が高ければ、多少業績が悪化しても配当を出し続けることが可能ですからね。

有野:それが一番心配やわ。ちゃんと見ておかないと、配当がなくなったり、株主優待がなくなったりしてるのに、気付かずに持ち続けてしまいそうやし……。でも、「財務の健全性」なんて調べても、よくわからんような気がします。「うちは危ないですよ!」なんて、どこの会社も言わないやろうし。

三井:厳密にいうと調べるポイントはたくさんあるのですが、たとえば返済の必要がない「自己(株主)資本比率」や「有利子負債」、「PBR(株価純資産倍率)」などが、競合他社と比べてどんな水準なのかを調べることが重要だと思います。ほかに、中長期投資でも相場や経済の大きな流れもチェックしておきたいですね。

有野:めちゃくちゃ調べなあかんことあるじゃないですか……先生、それって絶対、チェックしておかないとダメなんですか? 「まぁ、飛ばして次行こうか」ってのはダメ?

三井:う~ん、そうですね……。もちろん、すべてをチェックするのは大変ですが、ポイントを絞れば、そこまで大きな負担にはならないと思います。一番大事なのは、「楽しみながら投資をすること」。これは株式投資についてだけではありませんが、辛かったり、大きなストレスを抱えていたりすると、長続きしません。最初は調査や研究がストレスになるかもしれませんが、利益が出たり、配当や株主優待がもらえたりするなど、形として現れれば、楽しさを感じることができると思います。

有野:なるほど。確かに、最初のうちはあんまりおもしろくないゲームでも、やってるうちに楽しくなったりすることもあるなぁ。だから「まずはやってみること」ってわけですね。少額で失敗しながら、覚えて進むのが大事か。

「自分に合った投資」を探す

三井:ここまでお話ししてきて、いかがでしたか?

有野:そうですね。ゲームの説明書を読むのも面倒、って思ってしまうタイプだから、事前にあれこれ調べたり研究するのは性に合わなそうな気がします。かといって、毎日モニターに向かってカチカチやるのも疲れそう。かっこいいとは思うけど(笑)

三井:そうですね。「机の前に座ってカチカチやっているだけで、お金を儲けるなんてズルい」なんて、デイトレードを含めた短期投資に否定的なイメージを持たれている方もいらっしゃると思います。でも短期投資やトレードで継続的に勝つためには、ルール作りや継続することなど、お仕事同様に真摯に取り組む必要があるでしょうし、楽に稼げる手段はないと思います。どのくらい時間や労力をかけられるか、ライフスタイルや目的や手段に合わせて「自分に合った投資」を探すことが一番大切なことかもしれません。

有野:先生は研究とか分析が楽しい、って感じるんですか?

三井:もちろん、大変だなぁと感じることはありますよ。でも、研究や分析を通して自分の思惑がピタリと当たった時は「脳汁ドバー」の状態になります(笑) これも株式投資の醍醐味の1つだと私は思います。

有野:先生の口から「脳汁ドバー」なんてセリフが聞けるとは思わなかったです(笑) そうかぁ、「脳汁ドバー」を経験すると、研究や分析も楽しくなってくるのか。

三井:性格だけではなく、資金力や生活スタイルによって、「自分に合った投資」は変わってきます。それに、たくさんの手法や投資スタイルについて、オールラウンドで対応できないといけない、というわけではありませんし、「まずは株主優待狙いから」というスタンスでも全然OKです。やっているうちに「次は配当を狙ってみよう」とか、「流行に乗った投資をやってみよう」だったり、「なんで株価や株式相場がこう動いたんだろう」など、いろいろなことに興味が湧いてくるかもしれませんから。

有野:う~ん、先生も含めて、この「お金の学園」で株についていろいろと教えてもらったけど……やっぱり最初は株主優待が楽しそうやし、株主優待狙いにしようかな。クルマはもらえない、ってことがわかったけど(笑)

三井:それでいいと思います。気になることやわからないことが出てきたら、その都度、調べてみるといいでしょう。ただし、余裕資金でやったり、資金を何銘柄かに分散したりといった「リスク管理」はするようにしてくださいね!

有野:うわ~、また新しい言葉が出てきた(笑)

次回(10月31日配信予定)は、有野さんが今までの授業を振り返っていきます。

有野晋哉
1972年2月25日生まれ。大阪府出身。テレビやラジオ、CM、雑誌の連載などマルチに活躍。コンビで公式YouTube「よゐこチャンネル」も開設しており、幅広い世代から支持を得ている。自身が50歳を迎えた2022年に、お金にまつわる知識の大切さに目覚め、日々勉強中。

三井 智映子絵
「美しすぎる金融アナリスト」として話題となり、全国各地で個人投資家向けセミナーやIRセミナーに登壇。投資教育をライフワークとしている。 ZAI、SPA、マイナビ、FX攻略.com、DIME、ワッグルなどメディア掲載、連載の実績も多数。IRセミナーの構成作家やプロデュースも手がける。著書に『最強アナリスト軍団に学ぶ ゼロからはじめる株式投資入門』(講談社)、『はじめての株価チャート1年生 上がる・下がるが面白いほどわかる本』 (アスカビジネス)がある。

ライター:新井奈央

※本記事は投資助言や個別の銘柄の売買を推奨するものではありません。投資にあたっての最終決定はご自身の判断でお願いします。

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