揺れる“大学再編問題” 静岡と浜松「対立」の構図は?(静岡県)

大学再編をめぐり、静岡大学が合意書とは違う再編案を進めようとしていることについて、波紋が広がっています。浜松市長が「大変困惑している」と話すなど、浜松側からは疑問の声が上がっています。

(浜松市 中野市長)

「合意書に基づく再編統合を進めるのがこれまでの流れだったはずで、今回の静大の案はいったい何なのかよくわからない。大変困惑している」

地域からも期待されていた大学再編でしたが…疑問の声が相次いでいます。静岡大学と浜松医科大学は運営法人を1つに統合した上で、医学と工学などが連携する「浜松地区の大学」と「静岡地区の大学」に再編することで2019年に合意しました。しかし、当時の静岡市長や市の関係者が「静岡にメリットがない」と発言。静岡地区の新大学は今より規模が縮小する恐れがあるなどとして、静岡キャンパス側が反対し再編は延期となりました。こうした中、2023年2月、再編に慎重な静岡大学の日詰学長が合意書とは異なる私案を発表。すると、浜松市は合意書通りの再編を目指す期成同盟会を発足しました。

(浜松市 鈴木元市長)

「日詰学長に猛省を促したい。多くの県内の皆さんに理解していただき、大きなうねりをつくりたい」

しかし、10月16日、静大・浜松キャンパスが急きょ会見を開き、学内で合意書の白紙を視野に入れた議論が進んでいると明らかにし、静岡側と浜松側の深い溝が鮮明になったのです。

先週、開かれた静岡大学の評議会では、合意案である「1法人2大学」ではなく、日詰学長の私案である「1大学2校」の案が検討され、浜松キャンパス側が反対する中、これを静岡大学の正式な案にする方針で合意しました。

(静岡大学 日詰一幸 学長)

「最終的には静岡大学の(未来の)ビジョンということで、皆さんがもろ手をあげて賛成ではなかったですけれども、会議として認めていただいた。ただし、だからといって合意書を白紙にするということではございません」

現在の合意書を白紙にするというものではないと説明しましたが、先週、浜松医大は「浜松キャンパスが反対する中で成案とされたことは遺憾」とするコメントを発表。さらに、23日、静大に合意書通りの再編をするように求める文書を送りました。

浜松市長も会見で合意通りの再編を求めました。

(浜松市 中野市長)

「市も地域の生き残りをかけて高等教育機関の必要性を感じている。合意案に基づく再編統合が地域にとって必要なものである」

24日、浜松の経済界も「合意書通りの再編を実現するよう求める」コメントを発表するなど、浜松側を中心に静岡大学の対応に疑問の声が上がっています。

一方、川勝県知事は23日の会見で…

(川勝知事)

「大学自治の問題は、大学に任せるというのが私の基本的なスタンス。静岡市と静岡市議会はこれを了解したので、議論が紛糾することになった。これは反省になると思う」

注目が集まる中、静岡大学は25日に役員会を開き、合意案とは違う「1大学2校案」を静大の正式な案とする方針です。

静岡大学、浜松医科大学の再編問題について整理します。

2019年、両大学は「1法人2大学」案、運営法人を1つに統合し、静岡と浜松に新たな大学をつくるという案で合意していました。静大・浜松キャンパスと浜松医大は、この案を推進したい考えです。これに対し、静大・静岡キャンパス側の反発で新たな案に浮上したのが、「1大学2校案」。1つの総合大学にして、2つの分校を置くというものです。

そもそも大学再編は、地域に特長のある大学ができれば、優秀な若者が集まり街の活性化につながることから注目されています。浜松市や浜松の経済界を含め、浜松側は一体となってもともとの「1法人2大学」案に賛成の立場を示しています。

一方で県や静岡市は「大学のことは大学に任せる」として中立の立場をとっています。

(コメンテーター 津川 祥吾さん解説)

「行政も絡んできているということですね、 県静岡市は特に中立 という話ですが、文部科学省の方に確認してみましたが、少子化という社会的な問題はあるけれども、現段階 で文部科学省として、大学にこういう再編 をしてくださいと言ってるような、それを 進めているような状況では必ずしもないので、 あくまでも大学同士でしっかりと議論を 深めてほしい…こういうスタンスでしたね」

25日、静大は役員会を開き、先日の評議会で示された「1大学2校」案を正式な案とすることを決める見込みです。これにクギを刺すように、23日に浜松医大は静大へ「合意書の履行」を求める文書を送った形となりました。

静大が「1大学2校」案を正式案をした場合、浜松医大のさらなる反発は必至です。もし、合意書が白紙になるとなった場合、静岡大学は、社会的な信用を失うリスクも発生します。地域も巻き込んだこの混乱をどう納めるのでしょうか。

(コメンテーター 津川 祥吾さん解説)

「話し合いをする以上はやはりお互いの 信頼関係というものが必要になってき ますから、合意を反故にするという やり方がどうなのかという疑問は確か にありますよね、地域にとって 大事というのもありますが、そもそも研究機関であり、こと教育機関 ですから、例えば学生 さん不在の議論というもにならないかどうか、やはり心配なとこではありますよね」

静岡大学の今後の動向が注目されます。

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