「ブギウギ」ってどういう意味?【榎政則の音楽のドアをノックしよう♪】

NHKの連続テレビ小説「ブギウギ」が始まり、改めて「ブギウギ」とは何なのか、気になった方も多いのではないでしょうか。語感がおもしろく、その語感のままの楽しい音楽という印象がありますが、ここで「ブギウギ」を深堀りしてみましょう。

「ブギウギ」の語源

「ブギウギ」は「Boogie-woogie」と書き、「Boogie」という言葉にリズムを整える「woogie」を足した言葉です。

似た発音でリズムを整えるというのは、日本語でもあります。

「驚き桃の木山椒の木」「嫌なこったパンナコッタ」等は一度は聞いたことがあるのではないでしょうか。(最近は滅多に聞きませんが・・・) こういった言葉遊びが名前になるというところからも、「ブギウギ」の楽しさが伝わってきますね。

それでは「Boogie(ブギ)」とはいったい何なのでしょうか。これには色々な説がありますが、アフリカの言葉から取られた、ということでは一致しているようです。「太鼓」という意味だとか、「踊る」という意味だとか、説が色々あります。アフリカは当然ものすごく広く、様々な言語がありますから、どの言葉かを特定するのは難しいようです。

例えば、アジアの言葉で「ハナ」と言われても、日本語なら「花」または「鼻」、韓国語なら「1」、ハワイ語なら「仕事」を表すことになり、どれだか分からないですね。

いずれにせよ「ブギウギ」はアフリカ系アメリカ人が始めたノリの良い音楽を指すようになりました。

「ブギウギ」はどんな音楽?

「ブギウギ」は、ピアノで演奏されることが普通です。身体を熱狂させるような、スイングの効いた独特な8ビートのリズムです。

ブルー・ノートを用いた音使いで、構成やハーモニーは「ブルース」とよく似ていますが、どちらかというと哀愁のある「ブルース」に対し、「ブギウギ」はプラスのエネルギーが強く、熱狂的です。

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20世紀前半にシカゴで大ブームをもたらし、アメリカ全土に広がります。そうして、ピアノだけでなく、バンド等でも演奏されるようになりました。1945年の戦争終結後以降は、ロックンロールの登場によって、ブルースやブギウギもこちらに統合していき、現代のポピュラー音楽の土台となっています。

日本における「ブギウギ」

日本では第二次世界大戦で大打撃を受け、それを復興していくためのエネルギーが必要でした。 そこで登場したのが「和製ブギウギ」です。服部良一作曲、笠置シヅ子の歌による「東京ブギウギ」が1947年に発表されると、これが大ヒットしました。その人気ぶりは時代を越え、今日でもランキング上位に入ることがあるほどのロングヒットとなっています。

服部良一と笠置シヅ子のコンビは、続けて大量の「ブギ」を名に冠する曲を世に送り出しました。 「大阪ブギウギ」「ジャングル・ブギー」「ブギウギ娘」「買物ブギー」などなど…。

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「ヘイヘイブギ」では、笠置シヅ子の「ヘイヘイ」の呼びかけに観客が応答するようなパフォーマンスを見せ、これは当時としては画期的でした。他にもライブでダンスを披露したりと、今日では当たり前となっているライブパフォーマンスを作り上げた存在だと言えます。

戦後の日本を復興させる力は「ブギウギ」という音楽によってもたらされた、といえるかもしれません。

「ブギウギ」を聞いてみよう

実際に色々な「ブギウギ」を聞いてみましょう。どれを聞いても、なんだか聴き馴染みがあるなあという印象を受けるとともに、古くささも感じることと思います。

アメリカの「ブギウギ」を聴けば、少し野暮ったいようなリズムや歌いまわしを感じるでしょうし、日本の「ブギウギ」を聴けば、演歌よりもなお古き時代を感じます。

洗練されていない、むき出しの音楽なのですが、それゆえにどうしようもなく愉快な気分になる、そんなパワーが「ブギウギ」にはあります。

きっと音楽の楽しさを全身で感じることができるでしょう。(作曲家、即興演奏家・榎政則)

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 榎政則(えのき・まさのり) 作曲家、即興演奏家。麻布高校を卒業後、東京藝大作曲科を経てフランスに留学。パリ国立高等音楽院音楽書法科修士課程を卒業後、鍵盤即興科修士課程を首席で卒業。2016年よりパリの主要文化施設であるシネマテーク・フランセーズなどで無声映画の伴奏員を務める。現在は日本でフォニム・ミュージックのピアノ講座の講師を務めるほか、作曲家・即興演奏家として幅広く活動。

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