【中国】政府が屋外スポーツ振興へ[経済] 関連用品市場は将来的に4倍も

中国政府は24日、2023~25年の屋外スポーツ・レジャーの振興計画を発表した。登山道、キャンプ地、運動場といった施設を拡充し、人々が屋外スポーツ・レジャーを楽しめる環境を整備する考え。関連産業の規模は35年までに3兆元(約61兆円)にする計画だ。今回の振興策は関連用品市場の成長を後押しする見通しで、証券会社は市場規模が35年までに21年比で4倍以上に拡大するとみている。

中国国家発展改革委員会や国家体育総局などが計画を発表した。政府は昨年も屋外スポーツ・レジャーの振興計画を発表。昨年も関連産業の規模を3兆元にするとの目標を示しており、今年は目標を堅持した形。

今年の計画では、25年までに屋外スポーツ・レジャーに関する施設の建設などに注力し、人々の需要に合致した環境づくりを進めると強調した。

対象施設は多岐にわたる。政府は、サッカー場、バスケットコート、テニスコート、バドミントンコートなどがあるスポーツパークの建設に力を入れる計画で、球技の振興に注力する意向を示した。

加えて、ウインタースポーツ、ウオータースポーツの施設建設にも力を入れる考えを表明した。

さらに、山間部や郊外などを中心にキャンプ場、登山道、サイクリングコース、ウオーキングコースなどの整備を推進する方針を示した。

政府が振興策を導入する背景には、中国の屋外スポーツ・レジャー市場の見通しが明るいことがある。中国では、長年の経済発展に伴い生活に余裕がある世帯が増加。こうした世帯の人々は近年、余暇の充実に力を入れる傾向にあり、とりわけ健康的なイメージがある屋外スポーツ・レジャーに強い関心を寄せている。政府としては、施設の拡充を通じて潜在的な需要を刺激し、関連産業の発展を図る考えだ。

■SNSへの投稿数急増

屋外スポーツ・レジャーへの関心の高まりは、交流サイト(SNS)の統計からも見て取れる。

中国の人気SNS「小紅書(レッド)」は19日、同分野に関する投稿数などをまとめた統計を発表。23年1~10月のキャンプに関する投稿数は前年同期比約2.5倍の160万件余り、ウオーキングは約4倍の150万件余り、サイクリングは約5倍の180万件余りとなった。スキー、ダイビング、サーフィンなどに関する投稿数も大幅に増加した。

屋外スポーツ・レジャーを楽しむ人の年代別比率は、23~30歳が31%で最も高かった。31~40歳が20%、19~22歳が18%と続いた。

ただ先進国に比べると、屋外スポーツ・レジャーを楽しむ人の数はまだ少なく、増加の余地が残されている。市場調査を手がける観研天下によると、中国の屋外スポーツ・レジャーを楽しむ人の比率は昨年時点で28.0%。一方、ドイツは58.0%、英国は55.4%、米国は52.9%、フランスは51.0%となっており、中国の比率はこうした国々の半分ほどにとどまる。

■愛好家は年5千元弱消費

政府による施設拡充などで、屋外スポーツ・レジャーを楽しむ人が増えれば、関連用品の販売も増える。

屋外スポーツ・レジャーの関連用品市場は範囲がはっきりせず、各調査機関が市場規模に関して異なる数字を算出しているが、いずれも市場は成長段階にあるとみている。

ニュースサイトの界面新聞によると、中信証券は21年の市場規模が253億6,000万元で、前年から3.4%成長したと算出。今後も増加を続け、35年までには1,000億元以上になるとの見方を示した。少なくとも21年比で約4倍になる格好だ。

小紅書は各分野の愛好家の年平均消費額を試算。スキー愛好家は4,910元、サイクリング愛好家は4,033元、キャンプ愛好家は3,323元、登山を含むウオーキング愛好家は2,110元となった。所得が順調に増加していけば、こうした数値も増えるとみられる。

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