社説:亀岡市長3選 理念をいっそう成果に

 亀岡市長選で、現職の桂川孝裕氏が3選を果たした。自民党や公明党に加え、無所属の地元衆院議員の支援も受け、他の2候補を寄せ付けなかった。

 24年ぶりに3人が争う選挙になったが、投票率は約36%で前回のほぼ横ばいと振るわなかった。大きな争点が提示されず、市の将来像や課題に対する論戦が盛り上がらなかったのは残念だ。

 2期8年の桂川市政の評価が問われた。市のふるさと納税の寄付額は、返礼品の充実などで2022年度が34億2500万円と右肩上がりで毎年度伸びている。

 この財源を元に、老朽化する市営火葬場や文化資料館の建て替えなどを計画。18歳以下の医療費や第2子以降の保育料の無償化など子育て支援にも取り組んだ。

 環境面でも、全国初となるプラスチック製レジ袋の提供禁止条例の施行などで環境問題に熱心な自治体として注目されている。「30年までの使い捨てプラごみゼロ」の目標は野心的といえる。

 次々と打ち出す新しい施策が、地価が高騰する京都市などから子育て世代を呼び込んでいる面はあろう。20年余り続いていた亀岡市外への転出超過は、21年から転入超過に転じた。

 ただ、ふるさと納税は毎年見込んだ寄付額が集まるとは限らない不安定な財源である。子育て支援のように継続的な支出が必要なソフト事業では、依存の危うさを指摘する声が少なくない。

 プラ製レジ袋提供禁止条例は施行から3年目だが、効果の検証はこれからだ。現状ではプラ類のごみ収集量は増えている。着実な減量への方策が問われよう。

 人口が転入超過になったとはいえ、00年のピーク時からは約9千人が減っている。特に中山間地で少子高齢化が急速に進む。移動の足の確保などで地域差が広がっており、是正策が必要だ。

 亀岡市は京阪神地域とのアクセスがよい上、サンガスタジアム京セラや保津川下り、嵯峨野トロッコ列車、湯の花温泉と独自の資源に恵まれる。これらを十分に活用した企業誘致や観光振興などで、ふるさと納税に頼らない財政基盤の強化やまちの活性化、人口減対策を図りたい。

 選挙中、他候補側から「パフォーマンスが多い」など桂川市政を理念先行とする批判も聞かれた。多様な声に謙虚に耳を傾け、施策の効果には客観的な検証を導入してはどうか。市民に見える形で理念をいっそう成果にしてほしい。

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