父「娘に申し訳ない」 大桑女児重体事故、猶予刑判決

判決が言い渡された金沢地裁の法廷=25日午前9時55分

  ●金沢地裁「過失は重大」/検察控訴しない方針

 昨年9月、金沢市大桑町の市道でスマートフォンを見ながら乗用車を運転し、小学4年の女児をはね、重体となるけがを負わせたとして、自動車運転処罰法違反(過失傷害)の罪で在宅起訴された同市末町、会社員長林龍馬被告(34)に対し、金沢地裁は25日、過失は重大であるとして、禁錮2年6月、執行猶予4年(求刑禁錮2年6月)の判決を言い渡した。検察側は控訴しない方針。厳罰を求めていた女児の父親は「あまりに刑が軽すぎる。娘に申し訳ない」と無念の思いを語った。

 事故では近くに住む斉藤莉杏(りあ)さんが登校のため自宅を出て、道路を横断したところを車にはねられた。現在も意識不明のまま入院が続いている。

 川内真里裁判官は判決理由で、被告がスマホを操作し脇見したことで事故が引き起こされたとし「基本的な注意義務を怠った被告の過失は極めて重大だ」と非難。「わずか10歳で突然将来を奪われ、本人や家族の憤りや無念さは計り知れない」と述べた。

 一方、被告に前科前歴がなく、任意保険で損害賠償金が支払われる見込みであることなどを考慮し、執行猶予が相当とした。

 判決などによると、被告は昨年9月13日朝、大桑町の市道で乗用車を運転中、左手に持ったスマホを脇見したまま制限速度の時速40キロを上回る約67キロで走行し、道路を横断していた斉藤さんをはねた。

  ●被告「申し訳ない」

 判決後、長林被告は報道機関の問い掛けに対し「本当に申し訳ないと思っています」と述べた。

 

  ●「軽すぎる。納得できない」/涙浮かべ、思い語る

 「今後、同じような事故が起こらないようにと戦ってきたが、何も変えてあげられなくて申し訳ない。謝る気持ちでいっぱい」。斉藤さんの父安元(やすもと)さん(34)は閉廷後に取材に応じ、目に涙を浮かべて娘への思いを語った。

 被害者参加制度を利用し、公判に立ち会ってきた。危険運転致死傷罪に相当する無謀な運転だと主張し、悪質なドライバーが減ることを願って実刑判決を求めた。執行猶予付きの判決を受け、「人生を狂わせておいて、あまりにも軽すぎる。納得できない」と憤った。一方で、検察側からは判例と照らし合わせると判決を覆すことは難しく、控訴の予定はないと説明を受けたという。

 現場の市道は小学校の通学路になっているものの、片側1車線で道幅は狭く、斉藤さんの自宅側には路側帯しかない。父親の安元さんは危険な路側帯を避け、道路を渡って反対側の歩道を使って通学するよう指導していたという。

 事故を受け、市は市道を緊急点検し、注意喚起の路面表示を施すなど安全対策を進めた。ただ、横断歩道の増設や道路拡幅といった抜本的な対策には至っていない。

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