切削部品加工の田村工機(真岡市石島、戸頃宏文(ところひろぶみ)社長)が技術力を生かして開発したアウトドア用調理器具「L.T.Cooker(エル・ティー・クッカー)」が人気を集め、生産待ちの状態が続いている。人気の理由は350ミリリットルの水を1分35秒で沸騰できるスピード。アルミニウム製で軽く、出荷個数は千個を超えた。独自のアウトドアブランドも立ち上げており、他のオリジナル用品を含め防災での活用も進めていきたい考えだ。
開発を手がけたのは戸頃智浩(ところともひろ)専務(43)。登山愛好家でもある戸頃専務によると、極寒の山で湯を沸かす際はわずかな時間でも長く感じられ、恐怖さえ覚える。少しでも早く沸くクッカーをつくろうと、5年前から開発に挑んだ。
登山用品のため軽くて強度があり、固形燃料1個で沸かすことができるよう、炎の当たる底部に多数の突起をつくるなどして表面積を広げ熱吸収率を高めた。
アルミの塊から切削機で削り出しては、自ら那須や日光の山に登って性能を試した。10回に及ぶ試作を経て昨年、同社切削部の杉山仁(すぎやまじん)リーダー(44)が突起やクッカーの下部を厚さ0.5ミリに加工することに成功。強度試験もパスし、商品化にこぎ着けた。
クッカーは円形で内径約9センチ、高さ8.7センチ、重さはわずか78グラム。バーナーで燃料4グラムを燃焼させた場合、350ミリリットルの水が1分35秒で沸く。同社によると、チタンアルミ製のクッカーと比べ約1分早く、「ここまで軽くて沸騰まで速いものはない」と戸頃専務。「爆速沸騰」と称するファンもいるという。
昨夏、1個1万3200円で発売した。同11月から真岡市のふるさと納税の返礼品にも登録したところ、独特の美しい形状も人気を集め、受注に生産が追いつかない状態が続く。
同社はクッカーのほか五徳、アルコールストーブ、1人用鍋なども開発。自社のアウトドアブランド「TMRindustries(ティーエムアールインダストリーズ)」を立ち上げた。戸頃専務は「防災にも役立てていきたい」と話している。